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梅は咲いたか桜はまだか
うちの姉について語ろうと思う。
年がら年中こけしカットのうちの姉。
どこにでもいるおばちゃんなのだが、なんだかどこにも居そうにないうちの姉。
今だって朝の連ドラに夢中だ。
主題歌を歌いながら皿を洗う。
「ねーちゃん!うるさい、近所迷惑。」
「あんた、暇してんでしょ?」
「暇してない!」
姉は般若の形相でいった。
「牧野裏植物公園に行くよ!」
「行かないってー。」
朝から何をいそいそやっているかと思ったら、お重に入った弁当ではないか!
「これ食べたいでしょ。次の段にはおはぎが入ってんだよー。」
ニタニタ笑う。おカッパ頭も相まって新種の妖怪のようだ。
「分かったけどさ、桜はまだ見られないと思うよ。」
「違うのよ。梅を見るのよ!」
どこの世界にも変わり者はいる。
うちの姉はその類に間違いなくはいる。
「えー、寒いから俺はやだよー。」
「さっ行くよ。」
姉はなにやら化粧を始めた。
こうなったら、梅でもなんでも見るしかない。
朝から騒がしいうちの姉である。
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