紫陽花とひまわり

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紫陽花とひまわり

僕は6月生まれなので、紫陽花は何かと縁のある花だ。 ちなみに姉は8月。 姉はひまわりが好きだ。 「両方植えてもそんなにお金がかからないし。」 そういって姉は庭に紫陽花とひまわりを植えせっせと世話をしている。 「赤い紫陽花はさ、なんだか不気味なのよね。」 姉はぶつくさ言いながら、紫陽花が青くなるように土壌を作っている。 姉は長年勤めていたメガネを売る会社を辞め、今は仕事を探しているんだかいないんだか。 僕も似たりよったりで、何となく、家庭教師のバイトを続けている。 加えて6月。 こうジメジメしていちゃ何もする気が出ない。 「はい、どうぞ。」 「うわぁ、ちっちゃい紫陽花。」 それは、紫陽花の形をした和菓子だった。 僕は一口で平らげた。 「こら、お茶もあったのに。」 そういう姉はしげしげと和菓子を見つめながら食べている。 「ひまわりの和菓子はないのよねー。」 「ネットさがしたらあるかもよ?」 姉はムスッとする。 「ネットはねー、ネットは。」 姉いわく、ネットは商品を直接見られるわけじゃないから嫌なんだそうだ。 どケチな姉らしい発想である。 ブロロロと郵便局のバイクの音がする。 郵便を受け取ると母からだった。 「まぁまぁ!」 姉が嬉しそうな顔をする。 そこには、ひまわりと紫陽花の箸置きが入っていた。 母からだ。 今日一日姉の機嫌が良かったのは言うまでもない。
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