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家に帰ると、母にシャワーを浴びて、身体を綺麗にするよう言われた。
私は母の言うことに従い、身体を綺麗にする。
母は白装束に着替え、墨をすり、待っていた。
母は私の身体に筆を使い、難しい漢字を書き込み始める。
顔にまで書き込まれた。
全身が墨による文字で埋め尽くされたのだ。
なんでこんな事になってしまったのか、理解できず、何度も泣きだしそうになってしまったけど、母の異常な程の厳しい表情が、涙が流れだすと言う行為を抑え込む。
母は自分の隣に座るよう、しゃくり上げる私に命じた。
私は身体がブルブルと震え続ける状態になってしまったが、母の隣に座る以外、選択肢がない状況を感じ取り、大人しく座る事にした。
母は意味不明な言葉をひたすら連呼する。
私はただ、目の前を見据えることしか出来ない。
身体がヒクッと大きく震える。
何かが体内で蠢いているような感覚になり、胸がやたらと重苦しくなる。
背筋を突き抜ける悪寒。
喉が焼かれているような痛み。
身体がビクッと震えると同時に、口から黒いドロドロとした物が吐き出す。
何度もビクッ、ビクッと身体が大きく震え、口から黒い得体の知れない物を吐き出し続けるのだ。
涙が溢れ出し、周りは酸っぱい異臭に溢れた。
母は両手を組み、意味不明な言葉の連呼を一心不乱に続ける。
私の嘔吐が収まり、身体の震えが収まると、母は言葉の連呼を止め、私を抱き寄せた。
「こんなに速く、燐とのお別れが来るとは思わなかったよ」
母の涙が私の顔を撫でていく。
「どういう事?」
状況も意味も分からない私の母への精一杯の質問。
母は静かに私を見つめ、不思議な力のことについて、静かに語り出す。
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