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約束〝一沙〟
「ごめんね。__じゃなくて。」
燃え盛る炎の中彼はゆっくりと言った。私はそっと首を横に振った。
その顔が、どうしても懐かしい日々を思い出し、目を伏せた。
周りは炎が燃えているのに、彼の周りだけ微風が吹いているように感じた。そっと、鎧を彼は外した。懐から短刀を取り出して、目に当てていた私の手ぬぐいを外して笑った。
「僕は構わない。君には幸せな人生を歩んでほしい。と言ってもそれは呪いにしかならないんだろうね。だから、__。君が選んで。」
彼のなそうとすることが分かったから。
伏せた目から涙が落ちるのを感じた。
こんな最期になっても、まだ私の意見を尊重してくれる。
彼はゆっくりと私を抱きしめて言った。
「約束だけは守るから。」
それが彼も答えだった。
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