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「そういう栄太だって女を連れていい身分だな。」
背が一番高い男前な人がつぶやいた。
「こいつと僕はそういう仲じゃないから。」
そう言うとこの中で一番年上っぽい人の方に向き直った。
「例の件、始末しました。」
「悪いな栄太にだけやらせて。」
「別に。ただ今日は失敗かな。」
「だろうね。」
そういうことかわからず戸惑っていると、
「まさか女子に見られるとはね。」
静かにしていた人がつぶやいた。
「でもこいつ、役に立ちそうじゃねえか。」
吊り目の男がこっちを見てニヤリと笑った。
「お前さん、名前は?」
「一沙。入江一沙です。」
静かな人が呟いた。
「僕と同じ苗字だ。僕は入江九一。よろしく。」
入江さんフッと笑った。
「そうだね。この子は使えそうだ。私は桂小五郎。さっきの不躾な男が高杉晋作で君を連れてきたのは吉田栄太郎。残りが久坂玄瑞。」
「残りって失礼だなー。これでも藩の出世頭なのに。」
桂さん、が説明してくれた。
入江とか高杉とか久坂とか桂とかって今日、吉田稔麿について教えてもらったときに聞いた名前だ。
これでここが幕末じゃないという可能性が消えてしまった。
途端に恐怖が押し寄せてくる。追い打ちをかけるように高杉さんが言った。
「お前さん、仲間にならねえか?どうやらお前さんは気迫がある。気配を読むのも得意だろ。断るなんて選択肢はねえよ。断ったなら斬る。」
私は目を見開いた。
昔から気配を読むのが得意だった。
それを初対面で見破るなんて・・・。
そんな、この人たちと行動なんて・・・。そう思ったけど、この人たちしか頼りはない。
前を向いて私はいった。
「はい!よろしくお願いします。」
瑠璃を探すためにも、この人たちと行動する。
この時代に来て最初の決意だった。
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