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     * 「アマユキ」 「はい」本から顔を上げると政木くんが居た。  この人って昼休みに図書室へ来ることがあるんだ。  なれなれしく横の椅子に座ってくる。  裏表紙を上に、読んでいた本を閉じた。タイトルは見られたくない。  本の選択は読者の傾向を示す。って、この人、タイトルなんか興味なさそうだけど。  ぐるりと周りを気にしてから、いきなりニキビ顔を寄せてきた。  思わず退()く。「な、なに」 「オレじゃねえよ」 「はあ?」 「光治がな、アマユキにハナシがあるって」音量を下げて言う。 「コージ?」 「光治。麻緒(あさお) 光治(こうじ)」 「ああ、麻緒くん。何のハナシ?」  政木くんはコントみたいにコケた。「それ言ったら伝令にならんだろ。本人に聞いてくれ。今日の放課後、時間とれるか?」 「うーん。30分くらいなら」 「それでいいだろ。放課後、B棟の屋上で光治が待ってるから」椅子を鳴らして立ち上がる。  言うのがそれだけなら、座らなくてもいいのに。  二三歩行きかけ、上を向いてため息をつく。また戻ってきた。「、この件は極秘だ。他人(ひと)に言うなよ」 「どーして?」 「ほらぁ」政木くんは泣き顔をつくる。「ぜんっぜん、わかってない。本いっぱい読んでんだろ。高二だろ。わかれよ。とにかく、黙って、放課後、屋上」  図書室を出る政木クンを見送りながら、キーボードを押し続けたみたいに、 ワタシの頭に?が並んだ。  成績優秀な麻緒クンとスポーツ万能な政木クン。仲のいいコンビはいつもフザけ合っている。変なイタズラをして先生に怒られてる。そのコンビと、たぶん目立たない存在であろうワタシに、同じクラスという以外の関連はない。はずだ。  いったい何だろ?
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