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3日目の朝、ウリアンはほぼ回復していた
「そんなに若くもないのに…一体どんな鍛え方してるんだ?一応最後に軽く回復魔法をかけといてやる」
もう必要なさそうな位の回復力
あれだけのダメージを受けてたのに…
するとカリスが大喜びで言う
「やった!じゃあウリアン、剣の稽古しようよ!」
こいつ…頭おかしいんじゃないか?
死にかけて、丸2日寝て、ようやく回復した叔父に、剣の稽古をしろというのか…
「馬鹿言うな。今日こうして、もう普通に動いてるのが異常なんだぞ。もう少し大人しく寝かせていろ」
俺がそう言うと、カリスはガックリと肩を落とし、
「そうだよな…。せっかくこんなに元気になったんだから、無理させちゃダメだよな」
そう言うと、
「よし!俺まで剣の腕が鈍らないように、1人で稽古してくる!」
すっかり勇ましい顔になり、立ち上がった
その姿を見ていたウリアンが、
「ま、俺もいつまでもこうしちゃいられないからな。昼からほんの少し手合わせくらいするか」
そう言うと、
「ほんと?!よ~し!気合い入れて頑張ってくる」
俄然やる気になったカリスが、意気揚々と出て行った
「せっかく回復したのに、また倒れても知らないぞ?」
「別に本気で斬り合うわけじゃない。ほんの軽い準備運動みたいなもんさ」
そう言ってウリアンは、ストレッチを始めた
窓の外では、カリスがひたすら同じように剣を振っている
あの繰り返しの動きに意味あんのかな…
そう思って見ていると、
「ビオン。この森にはお前が必要なのか?」
ウリアンが突然そんな質問をしてきた
「…質問の意味がよく分からないが?この森にとって俺は別に居ても居なくても関係ないと思うが?」
よく分からず、そう答えると、
今度はスクワットを始めたウリアンが、
「そうか…。良かった。じゃあ…お前が、この森から離れたからと言って…動物や植物に、影響があるわけじゃ…ないんだな?」
さっきまで、ほとんど動いてなかった男が、立ったりしゃがんだりしながら話す
「俺はただ、この森に住まわせてもらってるだけだ。生きてくのに必要な量の命を分けてもらい、ただひっそりと生きてただけだ。森の精霊達の声が聞こえるし、人と関わるのが苦手な俺にとって、ここで暮らすのは楽だからな」
「…ふっ、…ふっ、そうか…。うん、よし」
なんなんだ?
「俺を何処かに連れ出したいのか?」
「…ふっ、…ふんっ、…それをっ…決めるのは…お前だ…」
ウリアンはそれ以上は話さず、ふんっ、ふんっ、とスクワットを続けた
「本当にやる気か?」
「まあ、そう心配するな。軽く剣を合わせて動きを確認するだけだ」
「ウリア~ン!早く早く!」
昼を過ぎると、本当に剣の稽古をすると外に出て来た
午前中いっぱい、カリスは1人で剣を振りまくり、ウリアンは柔軟とスクワットをひたすら繰り返していた
なんでこいつら、ぐったりしてないんだ…
「ビオン、一応この辺から動かないで見ててくれ」
ウリアンに言われ、家の前にどかっと座った
少しの間ウリアンが、肩を回したり、体を捻ったり、剣を振ったりし、カリスはその辺の木やら草やらを見て待ってるようだった
「よし、いいぞ」
ウリアンのその一言にカリスが剣を抜き構えると、辺りの空気が一変した
さっきまでとはまるで違う
ほんの少しの風さえも何かを起こしてしまいそうな…そんな感じだ
そんな中カリスが動き出した
!!
速い!
ウリアンまでの距離を詰めるのも、剣を振るうのも…
剣を交えた後一旦離れ、また別の態勢や、角度からウリアンめがけて打ち込んで行く
「………何が、軽く剣を合わせて動きを確認するだけだ」
少しでも気を抜けば死ぬだろ…
こいつらの視力と集中力はどうなってんだ…
しばらくそれが続き、カリスがウリアンから長めに距離を取って着地する
すると、
「すまないな。やっぱりまだ体が鈍ってるらしい。今日はここまでにしてくれ」
ウリアンがそう言うと、
「ううん。少しでもウリアンと稽古出来て良かったよ。ありがとう!」
満足そうにカリスが答えた
誰の体が鈍ってるって?
あれが少しの稽古かよ…
「あ~スッキリした~!早くウリアンと思いっきし稽古した~い!」
「ははっ。あまり年寄りに無理させるな」
座り込んだまま呆然としてる俺に、
「ビオンも剣の稽古してみる?」
カリスがとんでもない事を聞いてきた
「冗談じゃない!俺はスピロの子孫じゃないんだ。命が幾つあっても足りない!」
そう言った俺を見て、カリスは首を傾げていた
あんなに動いていた2人は、まったく息も切らしていない
ウリアンの奴、俺を騙したんじゃないだろな?
あんなの、頑張って稽古したからって出来るようになるもんか?
絶対スピロの血、引いてるだろ
「だが、カリスが微塵も疑わない程、叔父として生きているんだ」
そりゃ…微塵も疑わないだろうな…
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