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森を抜けて町に出る
「これから、何処に向かうんだ?」
「魔物の出没情報は、どうやら北東に向かう程多くなってるようでな」
「北東に向かいながら、魔物退治にあちこち寄ってく感じだよ」
魔物退治…
「魔物って、けっこう居るもんなのか?」
「俺が旅を始めた時は、滅多に出会わなかったんだけど、今は少し人が居ない所だと珍しくないし、色んな能力の奴が出てくるようになってきたんだ。ウリアンや父さんが旅をしてた時は、全然居なかったんだよね?」
「ああ。山やら森やら散々歩いたが、全然見かける事はなかったな」
あの森にだって、魔物が出始めたのは、じいちゃんが死んだ後からだもんな…
「ビオンは攻撃魔法とかも出来るの?」
「まあ…植物の力を使ったものなら少しは…。でも、ほんとに弱くて小さな魔物にしか出会った事がないから、実戦経験はほぼないぞ」
あんな怪我を負わせる程の魔物には出会った事がない
「そっか。大丈夫だよビオン。俺だって、ウリアンと旅に出るまでは実戦経験なんてなかったんだ。ビオンが実戦に慣れるまでは、俺とウリアンでしっかり守るよ。その代わり、怪我をしたらお願いな」
カリスが、ガッと肩を組ながら言う
「言っておくが、俺が治療出来るのは、植物由来の怪我だけだぞ?解毒だってそうだ。今回は、たまたま運が良かっただけで、どんな怪我でも治せるわけじゃないんだからな?」
あまり期待されても困るからな…
「ふ~ん?そういうもんなんだ?じゃあ、植物の魔物でラッキーだったんだな!」
尚も前向き発言のカリスとは違い、
「そうだな…。魔物のレベルも上がってきてるし、僧侶も仲間に出来ると、治癒の力を持ってると思うんだが…。この広い世界で、いつ出会えることやら…」
そう言って、ウリアンが空を見上げる
「でもまあ、この町はけっこう広いし、ビオンも旅は初めてだからな。今日は町で必要な物を揃えて一泊して、出発は明日にするか」
「そうしよ!町を出たら、しばらくは店がなくなっちゃうだろうし、今日のうちに美味しい物食べておこう!」
そっか…
これからは、食べ物とか、寝る場所とか、いつでも都合良くあるとは限らないんだな…
「ビオン、13歳の誕生日おめでとう!!」
「だいぶ過ぎてしまってるけどな。おめでとう!」
「あ…ありがとう」
俺の誕生日が過ぎてるのを聞いた2人は、誕生日祝いをしないとと言い出した
とっくに過ぎてるんだし、いいと言ったのに、
「じゃあ、ウリアンの快気祝いと、ビオンが仲間になったお祝いも一緒に!」
「お前は、ただ旨い物が食べたいだけだろ?」
そうして2人は、次々と色んな物を頼みだし今に至る
「明日からは貧相な食事になるだろうから、いっぱい食っとけよ」
ウリアンがそう言って酒を飲む
「なぁなぁ、ビオン。これ、すっごく旨いぞ!」
こんなに賑やかな場所で食べるのも、家族以外に祝ってもらうのも初めてで、初めは周りが気になってあまり食事が喉を通らなかった
けれども、2人のこれまでの旅の出来事を聞いてるうちに、いつの間にかそんな事は気にならなくなっていた
「よ~し。俺は、酒のおかわりを貰うついでに、色々聞いてくるからな~」
そう言ってウリアンは、カウンターへと行ってしまった
「ウリアンって、酒飲むんだな」
「1年に1回だけ。俺の誕生日を祝う時だけ飲んでたんだけど…。これからはビオンの誕生日にも飲めるな」
「1年に1回?自分の誕生日には飲まないのか?」
俺がそう聞くと、カリスは少しの間ウリアンの方を見つめていた
カウンターに座り、店主と話しているウリアンに、近くに居た女が話しかけている
ウリアンって、実はけっこうモテるのか?
見てくれ悪くないしな
「ウリアンは、自分の誕生日を教えてくれないんだよ」
ウリアンの方を見たままカリスが言った
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