偽りの

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「父さんが生きてた時は、旅から戻って来た時に、毎回お祝いみたいになってて、その時に幾つになったとかも話してたけど、誕生日がいつかは知らなかった。2人で旅をするようになって、ウリアンが俺の誕生日を祝ってくれた時、お祝いの言葉くらいは伝えたいから聞いたんだよ。でも、教えてくれなかった」 「………ふ~ん?なんでかは教えてくれなかったのか?」 一度視線を俺に戻し、俯いたカリスが、 「それが……。ウリアンはなんて言ったと思う?」 そう言って、不服そうな顔で再び顔を上げた 「………さあ?」 「ミステリアスな男っていいだろ?って言ったんだ。誰にも教えない、秘めた物を持ってるってのは、男として纏うオーラも違ってくるからなって。ほら、ああやって声をかけてくるお姉さんとかにも、教えないんだって。人は秘密にされると、知りたくなるもんだから、モテる男のテクニックってやつなんだって言ったんだ」 「………へぇ」 「へぇ。じゃないよ、ビオン!身内の俺にくらい教えてくれたっていいだろ?別に言いふらすわけじゃないんだしさ。毎年俺の誕生日は祝ってもらってるのに……。気を遣ってんのかもしれないけど、誕生日おめでとうって言って、今日みたいに一緒にご飯たべたいだけなのに……」 「タッド・グラディアートルに出会ったのは、俺が6歳になった日だった」 「家に帰ると…親父が死んでいた」 「俺はお前達の関係とかよく知らないけど、ウリアンは祝って貰うより、祝う方が得意なんじゃないのか?たった数日だけど、お前の事を本当に大切に思ってるのは俺でも分かるし…。まあ、それはお前も同じなんだろうけど。何て言うか…小さな頃から知ってて、成長したお前に、面と向かって祝われるのが照れ臭いんじゃないのか?俺もお前も、もうそんな小さな子供でもないのに、なんとなくあいつは子供扱いしている気がするし…。お前を褒めたり、頭を撫でたりしている時のあいつは、凄く幸せそうに見える。…多分だけど、お前はいつまでも祝われたり、褒められたりして、喜んでくれる存在で居て欲しいんじゃないか?あと…何歳になってもそうやって不貞腐れてるお前を見て楽しんでんのかもな」 俺の話を聞いて、え~?というような顔をした後、しばらく考えていたカリスが、 「…そっか…。そうかもな…。確かに、たまに俺の父さんに褒められたりしてる時も、なんだか照れ臭そうだった。じゃあ、そういう事にしておいて、目一杯祝われるとしよう!」 そう言ってまた、美味しそうに食べだした 「今日は俺の誕生日祝いだけどな…」 気付くと、ウリアンの周りには、いつの間にか数人の女達が集まって来ていた 適当に女の相手をしながら、店主と楽しそうに話している 「別に悲しいとか、寂しいとかいう感情は湧かなかった」 「俺にとって親父の死は、僅かな金が入らなくなるって事と、機嫌次第で怯えずに済むって事位にしか感じてなかった」 変われたんだろうな… こんなに大切だと思う奴に、あの日を祝われたくないと思うくらいに… 「俺も…変わってくのかな」 ボソっと呟くと、 「ん?何?何か言った?って…あ!それ!俺が後で食べようと思ってたやつ!ビオンさっき1個食べてたじゃないか!」 「は?そんなの知らないし。大体今日は俺の誕生日祝いなんだから、俺優先だ」 「ずる~い!俺も食べたい!せめて半分くれよ~」 もうずっと前からの友達の様に… まるで気なんて遣わなくていいと言ってるように… どこまでも優しいそいつに… 「なんだよ子供みたいだな。ほら」 俺はフォークに刺したそれを、口の中に押し込んでやった 「んぐっ。……美味しい~!ありがとうビオン」 満面の笑みだ 馬鹿だな 自分の分を取られて返してもらっただけなのに 「…くっ…くっ…。ははっ。馬鹿だな、お前…」 思わず笑ってしまった俺を見て、馬鹿だなと言われたそいつは、嬉しそうに笑った
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