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「おお~!凄い!これなら大きな物を動かしたり、攻撃を防いだり出来るよ!」
「だいぶ大きな力を使えるようになったな、ビオン」
ビオンが仲間になって1年
ビオンは、だいぶ魔法を使いこなせるようになっていた
今は、目の前にあった小さな木を、一瞬で大木にしてみせた
そして、3本の枝を地表に這わせたかと思うと、俺達3人を乗せてぐ~んと、上まで上げてみせる
「そうだな。色々試していくと分かる事もあるし、何て言うか、コツみたいのも掴めてきた。ただし、周りにある程度の植物がなければ、俺は何も出来ないからな」
こんな凄い事をしておいても、ビオンは全然偉そうじゃない
「たった1年で、こんなに成長出来たんだから、そのうちきっと、小さな雑草ですら強力な物に変えてしまえるような魔法を使えるようになるよ!」
「……変なプレッシャーをかけるな」
そう言ってビオンは、俺達と木を元通りに戻す
「なぁ、ビオン。いつも思うんだけど、せっかく成長させた植物を、そのままにしといたらダメなのか?その、森の精霊とかに、何か言われたりするのか?」
ビオンは、木や、花や、色んな物を魔法の訓練で大きくしたり、成長させたりするが、出来る限り元の状態に戻す
「ダメって事はないだろうけど…。精霊達は、ただ力を貸してくれるだけだ。ただ…。成長するまでって、周りの色んな影響を受けるもんだろ?それが、いい事も良くない事も…。そうやって成長してくはずのものを、無理矢理俺の勝手で一気に成長させるのは…なんか違う気がする…から」
俺の何気ない質問に、一生懸命考えながら答えてくれたビオンの頭を、ウリアンがガシガシと撫でる
「ビオンは、ちゃんといい成長をしているぞ」
「だからっ。俺はもう小さなガキじゃないって」
そう言って手を払うビオンは、いつもほんの少し困ったような、でも本気で嫌がってるようには見えない顔を見せる
「さてと、次の村を越えると聖都だな。出来れば聖都に入る前に色々と聞いておきたいところだが…。どこまで情報を得られるか…」
ウリアンが地図を見ながら考えている
そのウリアンにビオンが質問する
「僧侶は聖都に居る可能性が高いから、俺達はわざわざ南下してまで聖都を目指してるんだろ?聖都に入って色々聞くじゃダメなのか?」
「いや、そうなんだがな。なんせ聖都だからな。世界中の色んな宗教の総本山だ。入る為の資格とか、絶対にしてはいけない事とかあるかもしれないだろ?何も知らず失礼な事をして、下手したら追放されたり、命に関わるなんて事にもなりかねん。最低限の情報くらいは知っておきたい」
なんか…俺の思ってたイメージと違う…
「色んな神様が集まってる場所なんだよね?それを信じてる人達が集まってて、そんな事するかな?」
すると、ウリアンが、
「そう思うだろ?カリス。俺も昔はそう思ってたもんさ。だが、悲しいことに、そう上手くはいかないらしい。大切に信じる神が居るという事は、他の神の存在を信じないという事と同じだと考える奴、他の神を信じる者は排除すべきだと考える奴、世の中には色んな人達が居るもんだ。それが原因で争うなんて事も珍しい話じゃない。聖都なんて、そういう考えの奴等がウヨウヨしてるかもしれないからな」
「……ふ~ん?なんか、よく分かんないね?その神様は、自分を信じる為なら他の人を傷つけても許してくれるって事なのかな?そんな神様居るのかな?」
「さあな。だが、俺達の考えが正しいかどうかも分からない。世界には色んな考えの奴が居て、俺達もその一部に過ぎないんだ」
「…そっか。まだまだ知らない事がいっぱいなんだな。よし!次の村には、どんな人達が暮らしてるのかな~。楽しみだな!」
うっすら見えてきた村へと向かって、俺達は歩いて行った
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