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「カリス、14歳の誕生日おめでとう。早くお前と酒が飲めればいいんだけどな」
「そんなにお酒って美味しいものなの?父さんもウリアンが来た時は、毎日のように飲んでたもんなぁ」
「まあ、安酒はそんなに旨いってもんでもないけど、一緒に酒を飲むってのが楽しいんだよ。さあ、食べよう」
「うん」
目を閉じて手を組みお祈りをする
目を開けるとウリアンが、
「相変わらず、長いお祈りだなぁ」
と笑っている
「旅を続けてると、色んな人に出会うし、色んな生き物にも出会うからね。沢山感謝しないと。じゃあ、いただきます」
14歳かぁ
「父さんと居た時間と同じだけ、ウリアンと旅してるんだなぁ。でも、小さい頃の事はほとんど覚えてないから、そう考えるとウリアンとの時間の方が長いよなぁ」
「そうか…。もう、そんなになるのか。俺も歳をとるはずだ」
さっきまで上機嫌だったウリアンが、少し疲れたような顔を見せて言う
「な~に、じいさんみたいな事言ってるんだよ」
「でもまあ、俺の知ってる事は大体教えたし、あとはまあ、実戦あるのみだからな。これで俺は、いつくたばっても兄さん達に胸を張れるってもんだ」
ぐい~っとお酒を飲みながら言う
「何言ってんだよ。どんどん魔物が増えてきて、しかも色んな能力のある魔物も出て来てるってのに。魔物と戦える奴は、そんなに多くないんだろ?」
「まあな。でも、俺だっていつまでも今みたいに戦えるわけじゃないぞ?1人でも戦えるようにならなきゃな。あとは、お前の仲間になってくれる奴が見付かるといいんだけどな…」
最近ウリアンは、実力差のある魔物に出会うと、俺だけに戦わせ見学している
別にそれはいいんだけど、なんか、離れる準備をされてるみたいで……
「なんだよ、ウリアン…。俺から離れる気なのか?」
「別に離れたいわけじゃないが、いつ何が起きるかは分からないだろ?お前だって、魔物達のレベルが上がってる事はよく分かってるはずだ。俺は歳と共に体力も衰えていく。それに、いつ俺達の知らない魔物に出会うかもしれない」
たしかに…
どんどん人間みたいな魔物…言葉を話す魔物…色んな魔物が出てきている
でも…だからこそ、これからもウリアンに居てもらわなきゃ困るのに
「ウリアンが言いたい事は分かるよ。でも、今日は俺の誕生日だ。そんな、寂しくなるような事、言わなくてもいいだろ?」
「はっはっはっ。それもそうだな。よ~し。じゃあ、お前がまだ赤ん坊だった頃の話でもするか。俺はよくお前のお守りをしていたんだが、何故だか俺が抱いてる間だけ、お前はちっとも寝てくれなかった。別に泣くわけでもないんだが、赤ん坊は寝るのが仕事だってのに、全然寝なかったんだ。あれは、一体どういう事だったんだ?」
「そんな赤ん坊の頃の事聞かれたって、分かるわけないだろ?」
俺が赤ん坊の頃も、ウリアンはよく来てたんだな…
ずっと聞きたかった事…
聞いてみてもいいかな?
「なぁ、ウリアン。ウリアンは、どうして結婚しないんだ?旅をしているから?それとも…俺がずっと一緒に居るから?」
お酒を飲もうとした手を置き、ウリアンが答えた
「俺には、大切に思ってる人が居るんだ。今はもう、会う事も話す事も出来ないけど、ずっと大切なんだ。だから、それ以外の人と結婚する事はない。旅も、お前も関係ない」
真っ直ぐ俺を見て言った
知らなかった…
ウリアンに、そんな風に思ってる人が居たなんて…
会う事も話す事も…
多分、死んでしまったんだろうな
「俺も…いつか、そんな風に思える人に出会えるかな…」
ウリアンとその人みたいに…
父さんと母さんみたいに…
「ふっ。大丈夫だ。必ず出会える」
「ほんとに?」
「ああ。兄さんより長く一緒に居る俺が言うんだから、信頼しろ」
そう言って、又グビグビとお酒を飲んでるウリアンの目元が、なんとなく潤んで見えたのは俺の気のせいだったのだろうか…
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