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その少年は、森の奥深くにあった家へと案内してくれた
あの力…
森の中の家…
この子が魔法使い…なのかな?
ウリアンをベッドに横たわせると、
「毒の分析をするから、もう一度ちゃんと見せろ」
そう言って、またウリアンの体の上に手をかざす
再びしばらく白い光を放っていたその子が、
「運が良かったな。この森の植物に由来する物だ。これなら解毒出来る」
そう言った
「……は…ははっ。良かった…」
急に力が抜けて、その場に座り込んでしまった
「良かった…。本当にありがとう」
改めてお礼を言うと、その子は、
「お礼は、ちゃんと回復してから言え」
そう言った後、何かボソボソと口を動かしながら、白い光を放った
「これで解毒は出来たはずだ。明日には目を覚まし、それから数日かけて回復魔法をかけてけば、普通に動けるようになるだろう」
魔法…
「君は魔法使いなんだね?そう言えば、名前も言ってなかったね。俺はカリス。この人はウリアン。俺の叔父なんだ。助けてくれて本当にありがとう」
俺がそう言うと、以外な言葉が返ってきた
「俺はビオン。ビオン・コウリス。お前…グラディアートルだろ?」
「……え?なんで…俺の名前、知ってるの?」
「お前がこの首飾りを持ってるからだ。お前はどう見ても僧侶じゃないし、剣を持ってるから。この首飾りを持ってる者は、世界に3人しか存在しないはずなんだから、すぐに分かる」
そう言ってビオンが、服の中から首飾りを取り出し見せてくれた
「えっ!それ、俺と同じ?なんで?」
「なっ、なんでってお前…。スピロ・グラディアートルの子孫だろ?俺はカロシーニ・コウリスの子孫だ」
スピロ…
どっかで聞いたような…
「そう言えば昔父さんが、これの元々の持ち主が、そんな名前のじいさんだったって言ってた気がするな…」
「……嘘だろ?お前、グランディアートルの名前を…その首飾りを引き継いでるのに、何も知らないのか?!」
ビオンが信じられないといった表情で言った
「えっと……。あ、あれだろ?あの、200年前に魔王と戦って勝ったって話。たしか、そこにスピロじいさんが居たんだよね?」
「居たんだよね?って…。お前、スリロスは?まさか読んでないのか?」
スリロス…
なんか見覚えが…
「ああ…。昔よく父さんが読み聞かせてくれた本が、そんなタイトルだったような…。あ、そっか。あれって、魔王を倒す旅の物語だったっけ?」
「物語って……。俺達の祖先の偉大な功績を記した書物だろ?皆遠い昔の事だからって忘れてしまっても…。もう誰も信じなくたって…。スリロスと、この首飾りだけが、それを証明してくれるんだ…」
ビオンが、首飾りを見ながら悲しそうな顔でそう言った
「…そっか。ビオンのご先祖様は幸せだな。子孫にそんなに大切に思ってもらってるなんて」
「お前は…。悔しくないのか?俺達は、あの偉大な人達の子孫なのに…。もっと称えられてもいいはずだ。それなのに…。その時助けてもらった奴等の子孫だって沢山居るはずなのに…。もう誰も覚えてないどころか、信じてもくれないなんて…」
そう言ってビオンが、ぐっと両手を握り締めた
「俺は…。勉強も本を読むのも嫌いだから、まともにスリロス?を読んだ事もないし、父さんの読み聞かせも、いつも途中で寝てしまってた。だから、昔の事はあまりよく知らない。だけど、父さんもウリアンも、スピロの話をする時は、なんだか誇らしげで、そう思えるような事をした人は凄いなぁと思った。でも、父さんは俺に言ってた…」
「いいか?カリス。これから先、お前がスピロの子孫だと知って、感謝や称賛を述べる者に出会うかもしれない。だが、それはお前の功績じゃない。もちろん俺の功績でもない。俺達の功績と言えば、この首飾りと共に、どんなに必要のない時代になろうとも、スピロじいさんから伝わるとされる剣の技全てを、子孫に遺してきた事くらいだ。だから、お前はその分だけ受け取っとけ。残りの感謝や称賛は、天に放ってお前の沢山のじいさん達に渡してやれ」
「そう言って俺にこの首飾りを渡してくれたんだ」
「俺の…功績じゃ…ない…?」
「まあ、確かに。俺別に崇められるような事してないしな」
「……………」
ビオンは黙って何か考えているようだった」
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