偽りの

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叔父じゃない? 微塵も疑わない程って… 「カリスは、知らないのか?」 「ああ。…なあ、ビオン。オッサンの話を聞いてくれるか?」 そう言ってウリアンが、話し出した タッド・グラディアートルに出会ったのは、俺が6歳になった日だった 物心ついた頃、既に母親は居なくて、俺はクソみたいな親父に育てられた ふらっと出て行っては、2~3日帰って来ず、見てくれだけはいい親父が、金を握って帰って来ては、酒と僅かな食い物に使い、あっという間に金がなくなると、また出て行った 俺は幼い頃から、人や店から物を盗む事と、まだ食えそうな物が捨てられている場所を覚えた 全く自慢じゃないが、6歳になった頃には、なんとかその日食べる分は確保出来る程の、盗みのスキルを手に入れていた その日俺は、酔っぱらって帰って来た親父が握り締めていた中から、僅かな金を持って、いつも通り僅かな食い物を買い、明日以降の為の盗みをして帰路に着こうとしていた ところが、ある旅人の親子に見抜かれ、黙っててやるから道案内しろと言われる それが、タッド つまりカリスの親父と、その親であるオーティスとの出会いだった 今考えても、よくあんな小汚ないクソガキに声をかけたなと思うよ 俺はほんの短い時間、タッド達と共に居る事で、今まで知らなかった色んな事を知る事になる 何が何だかわからないまま家に帰ると…親父が死んでいた 別に悲しいとか、寂しいとかいう感情は湧かなかった ただ、その状況をどうする事も出来ない程ガキだった 結局色々あって、オーティスに全て片付けてもらう事となった 俺にとって親父の死は、僅かな金が入らなくなるって事と、機嫌次第で怯えずに済むって事位にしか感じてなかった だから、これからも、たいして変わらない日々が続いていくと思っていたんだ ところがあの親子は、俺を旅に誘って来た 旅とはどんなものなのか、この親子がどんな目的で何をしながら旅をしているのか、まるで知らなかったが、その土地になんの未練もなかった俺は旅に出る事にした 俺は旅を始めて、人としての普通の暮らし、人との関わり、一般常識…色んな事を知っていった そして、タッド達の旅の目的が、スピロの意思を継ぎ、剣の腕を磨き、各地で情報を集め、旅を知る為だと知った オーティスが、スリロスを読み聞かせてくれた日、俺は興奮して眠れなかった 本にまで記されるような、偉大な伝説の者の末裔が、今自分と共に旅をしている 俺は会う人皆に自慢してやりたいくらいだったが、そんな目的を持ってると言うのに、あの親子は出会った人達に、まるでそんな話はしなかった ある時俺は聞いたんだ 何故、偉大なスピロの末裔であると言わないのか?言ったらもっと、特別な待遇をされるのではないか?と するとオーティスは、 「そうだなぁ…。じゃあウリアン。あそこに物を広げている露店商を見ろ。お前があの店に行った時、あの店の者が商品について、『これはかつて、この国最強と言われた名君が付けてたとされる指輪だ』そう言って、古くさい本を出し、『これを見ろ。ここに書かれてある指輪がこれなのだ』そう言ってきたらどう思う?」 そう聞いてきた 俺は、そんな胡散臭い話信じないと言うと、 「そういう事だ。今、目の前にある事が大切なんだ。それが、自分の祖先に関する事だって同じだ。俺達は今、自分達がした事でのみ感謝されればいいんだ。それで十分だろ?」 そう言って笑っていた まったく… その精神は、ご存知の通りカリスにまで受け継がれているよ 旅を始めて1年が経った日 タッド達は俺の、生まれて始めての誕生日祝いをしてくれた そしてオーティスが言ったんだ 「なあ、ウリアン。こいつはな、ずっと兄弟を欲しがってたんだ。どうだ?ちょうどお前はタッドの1つ下だし、このままタッドの弟として俺達と家族にならないか?」 「じゃあ、これから俺はウリアンの兄さんだ!」 その日から俺は2つ目の…最高に暖かい家族を手に入れた タッドもオーティスも、本当の親子の様に接してくれた タッドと喧嘩した時は2人してオーティスに叱られたし、何かをタッドに優先させるという事もなければ、グラディアートルの末裔でも何でもない俺にも、タッドと同じように剣の稽古をしてくれたんだ 「なあビオン。2人の本心や、俺の知らない所での2人の事なんて知らない。けれども2人共、死ぬまで一貫して俺を本物の家族として接してくれたんだ。だから、俺が勝手にそれを壊す事は出来ないんだよ」 そう言って、とても嬉しそうにウリアンは微笑んだ 「そうか…。別に、俺にとってはどっちでもいい話だから関係ない。それより、そろそろ休め」 「ああ、そうだな。……ビオン、世界は広いぞ」 そう言ってウリアンは再び眠りについた
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