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ひねりに気づかず返せなかった、自分が非常に情けなく、恥ずかしくもなった私は大きな声を出していた。
そんな状態をさらに前進させたいのか、中尾はアメリカ人のような肩の使い方を見せ、
「おまえそれさ、市民権を放棄してるとか取られるぞ」
うう。
そりゃこれだけ海に迫られた町だから。雲岬町の浜は遠浅の代表例だし、住人も努力してるから、砂浜も海も大変に美しく、魚も取れるし、観光資源でもあるし。
「たくさん泳げなくても死なないよー」
のほほんのほほんと疲れ知らずの、事実人魚なんじゃないかと疑惑も囁かれている芽久の、そんな言葉は今私には優しくなかった。
ううう。
「それは先生に言って。芽久」
「元気出して、静佳ちゃん。この雨、なかなかやめないから」
「やめない?」
なに? 神様とかが?
変な言い方を引っかけて、芽久を見ると、斜め上方の空を見ていた。
「ダメなの。まだまだ、やめないの」
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