探偵西野と空色のくま

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 呪いの雨か。  中尾の言ったことを思い出して空を見上げてみた。そんな力が私にあるなら、それは今こそ使うだろうな。  先生が、参ったすみませんと言って、遠泳中止を決定するまで、自分は箱舟なんかを造りつつ、空から水を引き出してやる。  だってヤなんですって、遠泳。  私は好きという気持ちだけでこの町に移住してしまったほどの海好きなのだけれど、長い距離を泳ぐというほんの一分野を嫌がり泳ぐを拒否しているという時点で、中尾が言った市民権放棄のようなことになりはしないだろうか。  どれほど愛した男にだって、欠点の一つくらいは見つけるものではないのだろうか?   その時点で愛はもしかして崩壊するのだろうか。  自覚もないまま崩壊した愛にすがりつき……って私、最近ゴシックロマンスの読みすぎか?
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