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画面の向こう、まさに惨劇が行われている最中だった。
『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』
両腕をブンブン振り回し、腰を振り、がくがくと頭を跳ね上げながら女性が苦しがっている。針はじっくりと、彼女のお尻の中を掘り進んでいた。直腸を抜け、十二指腸を貫通し、その振動で生きながら腸をかき混ぜているのである。大量の血と排泄物と肉の欠片が、どろどろと混ざり合って彼女の足を伝っていくのが見えた。
『だずげでええええ!やだ、やだ、や、ぎ、ぎゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううげええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!』
次第には、痛い、ということさえできなくなったようだ。濁った悲鳴が、だらりと舌の垂れた口元から溢れ出している。あの針は、腸のみならず胃袋や食堂を“貫通”するまで止まることはない。白目をむいた彼女はなかなか死ぬことができず、ただひたすら体を痙攣させながらお尻からお腹を突き上げる激痛に耐えるしかないようだった。
まったく――と俺は肩を竦める。
確かに、昔からこの国には“死刑以上の罰を作るべき”と言う声はあったのだ。たくさん人を殺した殺人犯、婦女暴行の常習犯、それから――子供を虐待する毒親。ただ死ぬだけでは足らない、拷問してから殺す刑罰を導入するべき、と。
それを、“その通りだ”と思った人が政府のエライ人の中にいたわけである。そこで、かねてよりひそかに成立していた“不要人物処分法”ともに、試行されることとなったのだ。
“存在する価値がない”人間の候補を誘拐し、アンケートを書かせる。そしてそのアンケートでもし“自分”を選択してでも恋人や家族を守ろうとする人間は釈放。恋人や家族の欄にチェックを入れた人間は死刑。
そしてさらに、“自分以外の全員”を選んだ人間は、提案されていた拷問のうち一部を試してから死んでもらう。そういうルールになっていたのである。
――馬鹿な女だよなあ。あんたが“こいつを消したい”つっても、その要望が通るわけねえだろうが。もう少し頭使って、アンケの意味を考えてりゃ良かったのによ。
ふん、と俺は鼻を鳴らす。
いずれにせよ、確かなことは一つである。
邪魔だから、なんて――そんな理由で人を消してしまえるような人間に、ろくなやつはいないということだ。
『ぎゃあああああああああああああああああ、げええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!』
女の悲鳴はまだ、サイレンのように鳴り続いている。
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