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「可惜(あたら)さん」
「はい。人間は生まれつき、感情が白紙の状態で生まれてくるという意味の言葉です。昔の人々は泣きながら生まれてきました。しかしそれは『泣くという感情』を初めから持っていることになります。
そこで現代では遺伝子操作によって涙腺を取り除き、『負の感情の親玉』である涙を封印することができるようになり、タブラ・ラサの状態で生まれてくることが可能になりました」
「さすが可惜さん、教科書よりも分かりやすい解説でしたね」
先生が可惜さんを褒めると、教室のみんなが拍手をした。
「では涙を封印すると、どんな良いことがあるでしょうか?」
小学校からよく聞かれる質問に、教室のみんなが一斉に手を挙げた。
「悲しいという感情の広がりを抑えることができるので、気持ちの切り替えが早くなります」
「悔しいという感情をそのままやる気に変換できます」
「痛い思いをしても泣くことがないので恥ずかしくありません」
先生はみんなの意見を聞きながら、「うん、うん」と頷く。
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