タブラ・ラサ - 涙を捨てた僕ら -

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「どの意見もまさにその通りですね。『負の感情の親玉』である涙を封印することで、私たちはもっと感情豊かになれます。  昔の人は泣きながら生まれてきたために、はじめから感情のキャンバスに負の感情が塗られた状態でした。しかし今の私たちはまっさらなキャンバスを好きな感情で埋めることができます。科学の進歩は素晴らしいですね」  この学校には笑顔があふれている。いや、少なくとも涙の封印をした50年前以降に生まれた人たちが集まる場所はどこも笑顔であふれている。  部活の試合に負けても、失恋しても、お葬式のときだって誰も泣かない。だって涙は「負の感情の親玉」だから。悲しみ。痛み。悔しみ。憎しみ。妬み。喪失感。それら全部が涙によって大きくなる。  でも泣かなければ、その感情を引きずることも大きくすることもない。涙を封印した人の心はみんな前向きだ。
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