タブラ・ラサ - 涙を捨てた僕ら -

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「可惜さんのお祖母ちゃんが亡くなったみたいなので、今日、可惜さんは欠席です」  梅雨の始まりのころ、担任の先生が朝のホームルームでそう言った。 するとみんなが拍手をした。「死」は人生のゴール、お葬式はエンドロール。盛大に祝わなくてはならない。  僕は可惜さんがいないのかと思って、少し寂しくなった。利発的で勉強もできて、ショートカットで可愛いので、少し気になっている。  遠くにみえる都心のビル群まで静けさをまとった雨の日の学校。僕はぼんやりと可惜さんのことを考えながら、一日の授業を終えて部活に向かった。  僕はバスケ部だ。まだ一年生なので試合に出ることは基本的にない。今は夏にある大会にむけて、先輩たちのサポートをしている。
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