タブラ・ラサ - 涙を捨てた僕ら -

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 泣かない赤ちゃんが生まれるようになったのは、まだほんの少し、50年くらい前のことらしい。 僕を含めた10代の少年少女たちは、霞のような瞳をもって口をぼんやりと開いたまま、真顔でこの世界に生まれてきた。 「負の感情の親玉」である「涙」をすべて捨てて。 「タブラ・ラサ」  桜のみえる教室で、保健体育の先生が言った。今日は中学生になって初めての保健体育の授業だった。 「難しい言葉ですが、誰か意味の分かる人はいますか? 小学校で少し習ったかな」  すると一番前の席の女子が手を挙げた。
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