「今度、お父さんにも彼を紹介するね」

1/8
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
     窓の外を見てごらん。ほら、雪が降ってきたよ。  三年前のあの日と同じだ。いや、いきなり「あの日」とか言っても、君には通じないかもしれないが……。  娘が死んだ日だよ。  郷川(ごうかわ)祥子(さちこ)という名前を聞けば、君も思い出すかな? そう、あの子が私の娘だったのさ。  彼女は当時、二十歳になったばかりでね。国立大学の文学部で、フランス文学を専攻していた。  課外活動としては、まずボランティア活動のサークル。アルバイトも、予備校のチューターという真面目な仕事だ。良きお姉さん役として存在そのものが手本になったり、もっと具体的に、大学進学を目指す若者の相談に乗ったりしていたのだろうな。  ほら、ここからも見えるあのビルだ。今さら説明するまでもないが、あれが祥子の働いていた予備校だ。週三回くらいのペースで、祥子はあそこに(かよ)って……。  そして、あの日。あのビルの屋上から落ちて亡くなったのだ。    
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!