貴方となら、地獄の果てまで一緒に居たいです。

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鈍色のペアリングを嵌めた指で運転する貴方の横顔を見つめながら、貴方とお揃いの指輪をした手で貴方の手を握る。 真っ白で冷たく、そしていつも優しく撫でてくれた手。 貴方とはじめて逢い引きをしたのは、まだほんのりと夏の薫りが残る汗ばむ季節だった。 家でゴロゴロしていたら突然メッセージがきて、私の家の近くにある自販機で飲み物奢るから一緒に散歩でもしないか、と云うお誘いだった。 ミルクティーを奢ってもらって、それから他愛もない話をしながらとなりで並んで歩いた。 悩み事を話したら、貴方はこう云った。 『頑張ってる人にこれ以上頑張れって云いたくない、もう充分頑張っているから』 つづけて、『否定も肯定もしたくない』と云っていた。 気付いたら、森の中まで歩いていた。 『ねえ、知ってる?この森、秋が深まったら金木犀が咲くんだよ』 こっそり得意げになりながら、とっておきの秘密を教えた。 『そうなんだ、じゃあまた一緒に行こっか』 幸せなときに約束をするな、とはよく云われているけど、これは本当にそうだなと後から知る由になる。
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