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「圭祐もこれで失恋確定か」
「え?」
突如聞こえてきた椎葉の一言に、俺は驚き顔を上げる。
「あ、ガチャの時間」
椎葉はそんな俺の様子を気にすることなく、携帯を取り出す。
「今日から期間限定のガチャ始まってんだよ。この日のためにめちゃめちゃ素材集めたからさあ」
「……俺は別に失恋なんて」
放っておけばいいのに、俺はなんだかムキになって口にしてしまう。
俺が答えたことが意外だったのか、椎葉は一瞬俺のほうを見て目を開いたけれど、そのまま「ふうん」と適当に相槌を打っただけで、「よっしゃ、やるぞ10連」と小さな声を上げてゲームに戻っていった。
椎葉と、祥子の話をしたことはない。それでも、わかってしまうほどだったってことか?
俺は動揺していた。
「祥子は幼馴染なだけで。家族ぐるみで付き合ってきたから、きょうだいみたいなもん」
「まあ、俺はどうでもいいんだぜ、お前の恋愛事情なんて。言っといて悪いけど」
椎葉は元も子もないことを言う。なんなんだよ、とため息をついたところで、「まぁ……」と椎葉が呟いた。
「気づかないってことにすれば、なかったことになるもんな」
本質を突かれたみたいで苦しかった。
「……祥子に俺は、釣り合わないし」
動揺続きで、つい隠し続けてきた本音が零れ落ちてしまう。
「釣り合う、釣り合わないってなんだよ」
椎葉が笑う。
「祥子はいつでも輪の中心にいて、華やかで。俺なんかとは全然違う。俺はいいさ、でも、俺なんかが祥子といたら、祥子が変な目で見られるだろ」
「圭祐」
椎葉の声に呆れと真剣さが含まれる。
「いいか、圭祐。お前は祥子ちゃんのためといいながら、自分を守ってるだけだ。本気だっていって、失敗したら、否定されたら恥ずかしい。周りに『なんであいつなんだ』って後ろ指さされるのが怖い。それだけだろ」
ぐさりと胸に刺さる。
「釣り合う、釣り合わないって、そんなの誰が決めるんだよ。好きか、嫌いか、それだけだろ」
なにも言い返せなかった。
「それに……お前は祥子ちゃんのこと“いつも輪の中心にいて、華やか”っていうけど、それって本当か? 祥子ちゃん自身のことちゃんと見てたか?」
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