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その声を向けられた鬼子ちゃんは私たちよりも顔を引き攣らせた。
それでも涙を浮かべた瞳で気丈に鬼市くんを睨む。
『椎名さんが鬼市さんを誑かしたのが悪いんです! わ、私は何も悪くありませんから、絶対に謝りません!』
そう言むて鬼市くんの手を振り切り走り去って行った。
今誑かしたって言った!? 言った言った! なんかめっちゃ修羅場じゃない?
近くで耳をそばだてていた噂好きの神修生達によって瞬く間にその話は広まって、五分後には私が気まずくなってご飯をかきこみ逃げ出した次第だ。
思い出すだけでもため息がこぼれる。
「あることないこと噂されて本当に大変なんだから」
『その鬼市くんって格好いいの?』
「え? あー……そうだね。格好いいよ。普段は無表情だから、何考えてるのか分かりにくいところもあるけど」
『へぇ? 巫寿が誰かのこと格好いいなんて言うの珍しいね? それによく見てるじゃん』
恵理ちゃんのそんな一言に目を剥いた。
だって今のは恵理ちゃんが「格好いいの?」って聞いてきたから……!
電話の向こうで楽しげに笑う親友をちょっとだけ恨む。
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