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「そもそも妖力っていうのは、言霊を起こすための力じゃないんだよね。あくまで言霊の力は応用ってだけで、本来の力は種族ごとによって違ってくるんだけど────と、見せた方が早いか」
首を傾げる私たちに薫先生はケラケラ笑った。
「鬼市、信乃、瓏。見せてもらっていい?」
ほいきたとばかりに立ち上がった三人が練習場の真ん中に立った。
まずは鬼市から、と言われてひとつ頷いた鬼市くんはそのままスタスタと練習場の奥まで歩いていく。
不思議に思いながらも見守っていると、練習場を囲うように植えられている太い松の木の前に立った鬼市くんが振り返る。
「薫先生、一本いいですか」
「あはは、いいよいいよ。思いっきりやっちゃって」
一本いいですか?
鬼市くんは一体何をするつもりなの?
薫先生が頭の上で丸を作る。
ひとつ頷いた鬼市くんが松の木と向き合った。そして両手を松の木に添えた次の瞬間────ブチブチバキッ、と生まれて初めて聞く音と共に松の木の根っこが地表に現れる。
目の前で起こった光景にみんな目を点にした。
鬼市くんはまるで小さな子供を高く持ち上げる時のように軽々と松の木を引っこ抜いてしまった。
「……すっげぇ〜!!」
「まじかよ!!」
ワンテンポ送れて拍手喝采が起きる。
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