伍 雨と傘

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どうして来てくれたの? どうしてここが分かったの? なんで、無視せず一緒にいてくれるの。 「お前さ、もうちょっと場所考えろよ。寒い」 「ごめ……」 いい切る前に頭からばさりと布をかけられた。 松葉色の硬い布地が頬にあたり、柔軟剤の優しい匂いがふわりと香る。 これ、恵衣くんの制服……? 「ガタガタ震えてる奴見てる方が寒い」 ぶっきらぼうな物言いなのに、冷えた心にじわりと沁みる。 頭にかけられたブレザーを握りしめたその瞬間、ボタボタと大粒の涙が溢れた。嗚咽が漏れそうになって必死に膝に顔を押し付ける。 強まる雨の音と松葉色のブレザーが、それを隠してくれているみたいだった。
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