陸 千歳狐

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「開門祭だ〜ッ!」 人と妖でごった返す参道に立ち、慶賀くんは感極まったようにそう叫んだ。 たくさんの出店が所狭しと立ち並び、至る所にまねきの社の社紋が入った橙色の提灯が飾られている。河童の子供たちが興奮気味に風車を片手に私たちの横を走っていった。 同じように叫びながら走って行った慶賀くんに嘉正くんはやれやれと首を振る。 「ま、慶賀の気持ちも分かるけどな〜。なんせ俺らにとっちゃ四年ぶりの開門祭だからな」 少し感慨深そうにそう言った泰紀くん。目を瞬かせて「四年ぶり?」と聞き返す。 「おう。四年連続罰則で文殿の掃除」 「それについては、僕は一生お前らを許さない」 「俺もなかなかの被害被ったけど、来光が一番かわいそうだったよね」 鬼の形相をする来光くんの肩を労うように嘉正くんが揉んだ。 この人たち、一体どんな中学時代を過ごしていたんだろう……。 「巫寿は神話舞何時から?」 隣に立っていた鬼市くんにそう尋ねられてポッケに入れていたスマホを取りだし画面を叩く。 「昼の部は十三時からなんだけど、準備とかがあるからあと一時間くらいしたら行くよ」 「そうか、頑張れ。客席から観てる」 ありがとう、と少し気恥しい気持ちで笑った。
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