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「じゃあ“ヒロ”ね」
「ヒロ?」
「だって拾ったんだもん」
「落とし物かよ」
「だって救急車呼ぶなって言うし」
「ただの熱」
「親もいないとか言うし」
「事実だから仕方ない」
「私が拾うしか無かったでしょ?」
「良いよ、ヒロで」
「変な子ね」
「オネエサンって幾つ?」
「えっと、今年二十四歳になる」
「へぇ」
やっぱり反応が薄い
今時の高校生はこんな風なのだろうか
「帰る家はあるの?」
「ある」
ご両親が居なくても親戚とかと暮らしているのかもしれない
病気になって心配をかけたくない、とか・・・
反応薄だけど。案外良い子なのかもしれない
「何笑ってんの?」
「ん?いや、なにも?」
「ふーん」
ほら、やっぱり反応薄
そんな自分を誤魔化すように“ヒロ”の首元に手の甲をを当てた
「ほぼ下がってるね」
「お昼まで寝て良い?」
「良いよ」
ヒロが寝ている間に洗濯をしようと立ち上がった
◇◇◇
お昼までと言いながらヒロは夕方まで起きてこなかった
「・・・はよ」
「おそよう」
「・・・寝過ぎた」
「フフ」
晩御飯の支度をする私の手元を見ながら
「僕の分も、ある?」
語尾を上げて控えめに聞いてるようだがストレートだ
「あるよ」
「じゃあ、食べたら帰る」
「できるまで座ってて」
「うん」
誰にも食べさせたことは無いけどヒロは“不味い”とは言わなかったし
なんなら『うま』って聞いた
たった一日だけど、誰かのためにご飯を作るって貴重だった
夜のメニューは焼きカレー
仕上げにチーズと卵を落としてオーブンで焼くだけなのに美味しく思えるのはなんでだろう
「うま」
三度目の“うま”を聞いてヒロの看病が終わった
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