致死量の氷砂糖をわけあって。

1/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 ワンルーム。夜の静けさに、水音、控えめな嬌声。そして重なりあう身体に感じる体温。そこにあるのはそれらだけ。 「ん、ん、……っあ、っ、…〜っ!」 「かすみ、……声抑えなくていいよ」 「…ん、ゃだ、……っんあ、」  緩い速度で腰を打ちつけながら、恋人の透は囁く。彼と“こういう"関係になって日は浅くない。けれどいまだにおれは、みっともない喘ぎを聞かれるのが恥ずかしくて、無意識に声を抑えてしまう。  それでも無理に声を出させようとしたりはしてこないのが透だ。じきに抑えきれなくなるのをわかっているからかもしれないけれど。どこまでも優しくて、おれを尊重してくれる。行為中でも同じだ。この優しさに溺れていられることが、おれにはとても心地いい。 「……っ、んん、ぅあ、っ、ふ、…」 「つらくない…?」 「…ん、ぅ、きもちっ、い、……はぅっ、」 だからおれも素直に言葉を返す。気持ちいい。その言葉のあと、なかに挿しこまれた透のそれが、少し膨らむのを感じた。と、同時に律動が力強さを増す。あ、興奮してくれているんだ。ちかちかと星の散るような快感に声を抑えきれなくなりながら、おれは緩く口角をあげた。  嬉しい。クールな透の余裕のない表情も、色素の薄い髪から垂れる汗も、彼との欲のわけあいも、与えられる快感も。いまはぜんぶ、おれのもの。おれだけの、ものなんだと。 「っ、か、すみ、……ふ、」 「んっ、ひぅっ、あぅ、と……ぉる、」  甘く名前を呼びあう。ぱんぱんと乾いた音が、よりはっきりと空間に響く。 「あ、あ、あ、」 感度の高まるような感覚に、そろそろだ、と思った。 「…ん、っは、っとおる、」 名前を呼んで、自分の首もとをそっと指さす。これが、"合図"。瞬間、透はぴたりと律動を止めた。おれを見つめながら、喉仏かこくりと動いた。覚悟を決めたような表情で。 
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!