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電波式アナログ時計の秒針を見つめ、五秒前からカウントを始める。そして、更新と同時にページを開く。
「来たー! 五十嵐様!!」
凡子は、一話千文字ほどを読む間、不気味な笑顔を浮かべながら、何度も「ぐふふふふふ」とおかしな声を出す。
そして読み終わるとすぐに、コメント欄に感想を書き込む。
『恋先生
更新ありがとうございます。
今回も大変楽しく読ませていただきました。なんといっても、五十嵐様がバーでウイスキーを飲み過ぎてしまい……なところ、最高でした。
いつもより積極的に女性を口説く五十嵐様に期待は膨らむばかりでしたが、五十嵐様はまごうことなく五十嵐様でした。
尊いです。
毎回、語彙力が死んでいて申し訳ございません。次回も楽しみにしております。』
凡子の、読者としてのアカウント名は『七海子』だ。名前の響きは気に入っているのだが、漢字が気に食わないため、どうせならと綺麗な漢字に変えた。
凡子は作者の『水樹恋』に自分の存在に気づいてもらいたい一心で、毎回、感想を書き込んでいる。地道な努力である。
感想を書き込んだあとは、瞑想に入る。
今回の五十嵐室長を、脳内で映像へ変換する大事な作業だ。
散々五十嵐室長の姿を妄想した後、凡子は再読したい欲に駆られるが、必死で抑える。
初読の感動をもうしばらく噛みしめるためである。
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