シーズン1

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 凡子の勤め先は、大手商社の系列にあたる総合警備会社だ。凡子は商社の本社ビルで、受付業務を行っている。いわゆる受付嬢という職種だ。  本社ビルは、東京の代表的なオフィス街、丸の内にある。三十階建てのビルにはグループ会社も多数入っていて、一階には社員証がなければ通過できないゲートが設置されている。そして、ゲートの手前に受付ブースがあり、午前九時から、午後六時までは、二、三名の受付担当者がいて対応にあたる。  来客時の取り次ぎが主な業務内容だが、不審者がゲート内に侵入しようとした際の訓練もしっかり受けている。つまり、れっきとした警備員なのだ。凡子は、『メイドに扮した護衛』にも似た自分の『設定』がとても気に入っていた。  もう一つ、凡子が今の仕事で気に入っているのは、制服があることだ。キャビンアテンダント風のデザインで、コスプレ気分も味わえ、その上、毎日の仕事着を悩む時間が省ける。  蓮水監査部長とは、入社からひと月経ったころ、一度だけ言葉を交わしたことがあった。  受付業務の中に、社員証を忘れたと申告してきた人物の、確認と臨時カードの貸出がある。  ある月曜日、蓮水監査部長が受付にいた凡子の前に立った。その頃凡子は、すでに『五十嵐室長はテクニシャン』の熱烈なファンだったこともあり、蓮水監査部長のことは当然知っていた。
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