シーズン1

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 今日の泉堂は、濃紺のスーツに、紫色のネクタイを合わせている。センスは良いのだが、凡子にとってはそこが気に食わない。なぜなら、五十嵐室長の親友は、野暮ったい見た目をしている設定なのだ。それに、開発部にいる根っからの研究者だ。五十嵐室長の会社は化粧品メーカーなので、商社と会社内の部署の構成が違うのは仕方の無いことだ。  蓮水監査部長が、凡子の目の前を通り過ぎた。  一瞬、男性用の香水の匂いがしたが、残念なことにつけているのは泉堂だ。当然この情報は瑠璃から得た。  「二人は長時間一緒にいるから蓮水さんからも泉堂さんの香りがほのかにするの。自然に香りが移っちゃう関係ってことなの」  瑠璃が実際に二人の匂いを嗅ぎ比べたのか定かではない。二人に近い誰かから聞いたのかもしれない。  五十嵐室長は香水をつけている設定なので、蓮水監査部長にも香りを纏って欲しいのだが、人の好みはそう変わることはない。泉堂の香水は五十嵐室長のイメージに合うので、凡子は勝手に、泉堂の残り香を蓮水監査部長のものとして脳内変換させた。どちらにせよ、凡子の前を通るときは、いつも二人一緒なのだ。
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