#01

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#01

 乙女ゲーム、皆さんは遊んだことがあるだろうか?  主人公である女性プレイヤーを操作して攻略対象の男性キャラクターを攻略して疑似恋愛を楽しめるジャンルのゲームだ。  この物語の主人公、そう私はその乙女ゲームが大好きだ。  家から帰ってきて時間を作れば数々の乙女ゲームを攻略していき自称ではあるが乙女ゲームマスターを名乗れるレベル...だった。  学生の頃までは  学校を卒業をし、今や社会人となり学生の頃に比べればゲームを攻略できる時間は減ってきてしまっていた。  だけれども私は時間を無理にでも作り乙女ゲームを楽しんでいた。  遊ぶ為に働いていると言っても過言ではない。  そんな私が1番好んで遊んでいる作品が「イケメンフロンティア」  魔法とかモンスターが存在する異世界を舞台にフロンティア学園に通いながら私好みのイラストで描かれた同級生、後輩、騎士、王子と様々な男性キャラクターを攻略できる最高の傑作になっている。  何度も繰り返し遊んだがいつ遊んでもこの面白さにへんかはない。  だけれどこのゲーム、1つだけ不満点を述べるならとにかくバグが多い。  しっかりと正規ルートの選択肢を選んでいたのにも関わらずバッドエンドになってしまったりする。  狙った攻略キャラとは全く関係ないキャラのルートに唐突に進んでしまったりとバグは様々だ。  寧ろバグなしで最後まで攻略できる方が珍しくなっている。  制作者はちゃんとテストプレイをしたのかと疑いたくはなるが、それでも私はこのゲームはバグも含めて大好きだ。  今日も仕事を終え帰ってイケメンフロンティアで遊ぶとしよう。 「今日は誰ルートで遊ぼうかな〜」  帰りが楽しみすぎるせいか無自覚に独り言を言いながら帰り道を歩いていた。  しかしここでまさかの事態に 「信号は…青!」  横断歩道を渡っている少女がいた。  こんな時間に1人で大丈夫だろうか?と心配していると。 「あ…危ない!」  少女は暴走しているトラックに気付かぬままでいた。  ここで見過ごしてしまえばこの少女は命を落としてしまうかもしれない。  そんな姿は見たくなかった私はついとっさに。 「っ!」  少女を庇う為に前に出たが、それと同時に気を失ってしまう。  恐らく少女は今、助かったであろう。  でもそれに私は気付けない。 「…ここは?」  気付けば知らない場所に私はいた。  辺りに何かあるかと探してみるも何もない。 「とりあえず歩いてみようかな…」  探せば何かあるかもしれないので何も考えずにそのまま真っ直ぐ歩いていく。  すると。 「おっと…君かな?」 「えっと…貴方は?」  突然、目の前から神秘的な格好をした謎のイケメンの男が現れた。  え?ちょっとタイプなんだけど? 「僕はね。神なんだよ」 「あー神様ですかー…って神!?」  いきなり出てきたイケメンの男は自らを神と名乗った。 「そうそう。ま、とりあえず一旦話は聞いてもらうよ。そこに正座してね」 「はい…」  正座を頼まれたので大人しく正座する。  神の言う話だ。下手すれば天罰とかもあり得る。 「君はね。女の子を暴走するトラックから守って死んじゃったの。これがその映像」  神はポケットからテレビのリモコンみたいな道具を取り出し、ボタンを押して私が轢かれる映像を見せてきた。  正直グロい。  けれども私が助けたかった少女は大丈夫だったみたいだ。 「いや〜グロいね〜。でもあの少女を助けてあげたかったんでしょ?ふ〜かっこいい〜。イカすね〜」 「は…はい…ありがとうございます…」  初対面なのにかなり馴れ馴れしい。  乙女ゲームの攻略キャラであればこの馴れ馴れしさを私は上手く活かせれるかもしれないが今はそんなの考えている場合ではない。 「で、本題に入るんだけど君はね?完全には死ねてなかったの。今は生と死の間にいる感じ」 「そうなんですか?」  思えば自分の感覚は生に近いのでその話も十分あり得る。  というか神の話なんだから本当だろう。 「私はどうすれば…?」 「うん。復活は流石に難しいんだけど…今のままじゃ成仏できないんだよね。だからさ…転生、してくれないかな?」 「て、転生?どこに…?」  唐突に吹っかけられてこられた転生の話題  神を目の前にしているのでそういったのももしかすればあるかもしれないと思ってはいたがまさか自分が転生なんてするとは思ってもいなかった。 「君の好きなとこでいいよ。僕が連れて行ってあげる」 「好きなとこ…え!?好きなとこ!?」  ここで驚愕  それっぽい異世界に連れて行かれて魔王とか倒せとか言われるのかと思いきやまさかの好きな世界に行ける。  これはチャンス  大好きな乙女ゲームの世界に転生できる! 「じゃ…じゃあイケメンフロンティアの世界で!」 「イケメンフロンティア?ちょっと待っててね…」  神はまたポケットから次はスマホみたいな道具を取り出して指でタッチして何かを調べ出す。  恐らくイケメンフロンティアの情報だろう。 「乙女ゲームね…女の子が好きそうなジャンルだ。でもこのゲーム、バグ多いみたいだけど大丈夫?僕、バグとかの安全性は補償できないよ?」 「大丈夫です!」  神がイケメンフロンティアの世界の確認をしたらしく私に聞いたが私は自信満々に答えた。  何故ならば何度もプレイしているのでバグが発生しようと正規のルートに辿り着ける方法を私は知っているからだ。  なのでこの転生もバグが起きようが成功するに違いないだろう。 「じゃ…飛ばすよ?」 「はい…お願いします!」  神が何かしらの呪文を唱え出す。  そして 「行ってらっしゃ〜い」 「ありがとうございましたー!行ってきまーす!」  そうして私はイケメンフロンティアの世界へと旅立つのだった。 「おい…起きろよ」 「うぅん…これで100周目のクリア…」 「おいっ!」 「ひゃうっ!?」  居眠りしていたところ、私は聞き馴染みのある誰かの声の起こされた。 「ったくもう授業始まるぞ?」 「あ…あ…あーっ!」  間違いない。  この目の前にいるイケメン  そしてこの場所  この今着ている制服  ここは 「アラン君!」  イケメンフロンティアの世界だ! 「でっけー声出すなよ!」 「あぁごめんごめん〜ついうっかり」  目の前にいるイケメンはアラン、同級生の男子で攻略対象キャラになっている。  普段は強がるんだけど授業で分からない範囲があったらオドオドしちゃうところとか学食で好きな物を食べている姿とかたまらないんだよ。 「もうすぐ授業始まるんだしちゃんとしろよ。エリム、今日は移動教室だから遅れるなよ」 「分かってるよ。ごめんねアラン」  私はゲームではエリムという名前で遊んでいる。  アランは名前をエリムと読んでくれたので恐らく名前はこの世界でもゲーム同様に引き継がれたのだろう。 「じゃ、俺行くから」 「待ってよ。私も連れてって!」  この台詞!  この後にゲームでは選択肢が出るのだがここで私も連れてって!と言うと一緒に教室を移動するイベントが発生する。  ここはかなり序盤の範囲ではあるが最初の好感度を稼ぐ大事な場面でもあるので間違えずゲーム同様、同じ台詞を言う。  この流れでいけば私はアランと… 「いや悪い。俺、彼女と行くわ」 「は?」
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