#10

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#10

「これは...」  私の専属メイドのイリスが新聞を読みながら、頭を悩ませていた。 「どうしたの?」 「いえ...なんでも...」 「言ってよ?イリスにはいつも助けてもらっているから私も何かイリスの役に立ちたいな」 「ご主人様...」  イリスが私に何かを言おうと息を吸う。 「はい...実は、私の尊敬する画家が絵画展示会を開くとの話がありまして...行ってみたいのですが、私にはご主人様のメイドですので...」 「行ってくれば?私、留守番してるよ」 「そんな訳にもいきません...私にはご主人様の専属メイドですのでご主人様に何かありましたら...」  イリスは画家の絵画展示会に行きたいらしい。  家を見渡せば、壁に絵が展示されているので多分その絵を描いた画家だろう。 「いいよいいよ!イリスにも休日、必要でしょ?家は私に任せてイリスは楽しんできなよ!」 「ご主人様...なんとお優しい方...」  かなり喜んでいる。よっぽど行きたいんだ。 「では、私は行きます」 「行ってらっしゃい。家は私に任せてね」 「はい。では、1日のスケジュール表とメイド服をお渡しします。更衣室に来てください」 「はーい」  イリスと一緒に更衣室に行く。 メイド服は着方をイリスに教えてもらったので、すんなりと着れた。 「どう?似合ってる?」 「はい...ご主人様...とてもお似合いです...」 「ありがと〜」  イリスが私を真剣な眼差しで見てくる。  そんなに似合ってるのかな? 「イリスは私服に着替えたら?」 「私はメイド服が私服といっても過言ではありませんので...」 「いいから着替えてっ!私服、持ってないんだっけ?」 「...持ってます」 「じゃあさ?着替えてみてよ!」 「分かりました...」  イリスは私服に着替える。 「どう...でしょうか?」 「え?凄い似合ってる...」  イリスの私服姿は初めてみた。可愛い。 「ありがとうございます...では...」 「じゃあ、行ってらっしゃいませ。ご主人様」  1回これ、言ってみたかったんだよね。 「ふふ...行ってきます。エリム」  そうしてイリスは外に出た。  え?初めてイリスに名前呼びしてもらっちゃった。嬉しい。 「さてと...1日のスケジュールの確認だね」  私はイリスから渡された1日のスケジュール表を確認した。  まず最初にやるのは全部屋の清掃、うん。全部屋だよ。 「ひぃ...」  この家、かなり広いので清掃するだけで大変だ。次は洗濯 「綺麗にしなくちゃ...」  私が学園で着ている制服や夜寝る際に着るパジャマを洗濯する。  そして次は買い出し  メイドのルールとして外出の際もメイド服を着なくてはいけないからメイド服のまま、外出する。 「お母さん!メイドさんがいる!」 「そうね。可愛いわね」  かなり目立ってる。  ちょっと恥ずかしい。  イリスはこれに慣れてるのかな? 「あれ?エリムじゃない?」 「ジェシカ!?」  まさかのここで友達のジェシカに遭遇してしまう。  ジェシカにメイド服の姿を見られるとは思ってなかった。 「どうしてメイド服着てるの?」 「実はイリスが今日...」  とりあえずどうしてこうなったかを軽く話した。 「へぇ。エリム、偉いわね。きっと喜んでくるわよ」 「そう...ありがとう」 「それに...可愛い!似合ってるわ...私のメイドになってほしいぐらいに...」 「ジェシカの...メイド...?」  ありかもしれない。  ジェシカは優しいし、可愛いからジェシカのメイドになら私、なれるかも...と妄想を膨らませる。 「冗談よ。冗談」 「...はっ!」  いけないいけない。つい、妄想に浸ってしまっていた。 「じゃあ私...行くから」 「うん。メイド服のエリム、見れて嬉しかったわ。また学園で会いましょう」 「またね。ジェシカ」  ジェシカに手を振ると今日の夜ご飯の買い出しに行く。  そしてまた帰ってきて家全体を清掃し、料理を始める。  イリスが作ってくれたレシピを参考にして作り始める。 「ちょっと味見...」  料理が形になってきたので味見をしてみる。  うん。イリスがいつも私に作ってくれる料理の味だ。  料理が完成し、机の上に置く。  後はイリスが帰ってくるのを待つだけだ。 「ただいま帰りました」  そうしてすぐにイリスが帰ってきた。 「あ、おかえりなさいませ」 「ふふ...今日はありがとうごさいました。お陰でとても楽しめました」  そうして私はすぐにメイド服から私服に着替えた。  イリスもすぐにメイド服に着替えた。 「あ〜大変だったよ。イリス、いつもありがとう」 「いえ...これが私の役目ですので...」  イリスは今日、私が行ったスケジュールを毎日行っている。 それは体験して初めて理解した部分もあったのでイリスの存在に改めて有り難みを感じた。 「私はご主人様が幸せならそれでいいのです」 「そっか...じゃあさ?私がもし、誰かと付き合ったり結婚した場合は...イリスはどうする?」 「それは...」   誰かと恋人になる。それはいつか訪れる出来事かもしれない。  その相手はイリスではないかもしれない。 もし、ここまで私に尽くしてくれるイリスはそうなった場合、どうするのだろう?  興味本位ではあるけれど、聞いてみる。 「そうなれば...祝福しますよ。私はご主人様の為に生きていると言っては過言ではありません。ですが、ご主人様が誰かとお付き合いになられた際、それはご主人様だけの幸せではなく、メイドである私の幸せでもありますので、末長く主人様を見守ります」 「イリス...」  悲しむかと思ってはいたが、まさかの祝福してくれるみたい。  なんでいい子なんだ。 「ありがとう」 「はい...もしご主人様次第ではあるのですが、結婚式とかするのであれば、呼んでください。ご主人様と共に寄り添う方にお祝いの言葉を捧げたいので」 「勿論だよ!」  先の話ではあるけれど、もし誰かと結婚式をを挙げるならば、イリスを呼ぼう。 「ご主人様...その...今日はお2人で...」  イリスが何か言いたそうにしている。  気になるから聞いてみよう。 「どうしたの? 「今日は...添い寝...いいでしょうか?」 「いいよっ。一緒に寝よっか」 「ありがとうございます...今日はとても幸せです」  そうして食事を終え、お風呂も済ませたので寝室のベッドに2人で入る。 「では。おやすみなさい」 「イリス、おやすみ」  私とイリスは眠りにつく。が、まさかの。 「...主人様...ご主人様...」 「なんだろう...?」  イリスの声が聞こえてきたので起きる。 「好きです...」 「え!?」  まさかの告白された?  すぐにイリスの方を向く。 「...」 「なんだ寝言か...」  今の告白はイリスの寝言だった。  今見れるイリスの寝顔が可愛い。 「おやすみ...イリス」  また私も眠りにつく。  いつも以上に熟睡できた。
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