#09

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#09

 今日も授業が終わったのでいつも通り下校しようとした。まさかの光景を目にする。 「あれ…?あの人は…?」  女騎士のベルリスが何か悩んでそうに突っ立っていた。 「ベルリス、どうかしたの?」 「あぁ…これからモンスターの討伐に行くのだが、私ともう1人で2人で行く筈だったのだが1人がいきなり、体調を崩してしまって…私1人で行けるかどうか不安だったところだ…」 「ベルリス1人じゃ不安なんだ?」 「あぁ…まだ得体も知られていないモンスターだ。どうなるかが分からない」  ベルリスは1人でモンスターを倒せるかどうかが不安らしい。  ここは力になってあげたい。 「手伝うよ。ベルリス」 「危険だぞ!?そもそも学生が…」 「大丈夫。寧ろここでベルリスに何かあったら私が困るよ」  私が今、学生である点でベルリスは心配してくれている。  でも、私はこの世界のモンスターの弱点等は、ゲームのファンブックで知っているのでベルリスより私の方が戦える。 「分かった…では、助っ人としてエリム、貴方に来てもらおう。まずギルドにご同行願う」 「はーい」  で、私はベルリスにギルド連れて来てもらい、剣と防具を渡された。  ベルリスみたく、騎士からの許可があれば助っ人をするのは可能との話で、助っ人は私以外のもよくある話らしいので予備の剣や防具は普段から用意されているらしい。  身に付け、ベルリスの前に立つ。 「どう?似合う?」 「あぁ…美しい。なんと美しい…」 「ありがとう…」  ベルリスがやたらと私を見てくる。  そして後ろにいた女騎士も私の方を見てくる。  どうしてこう女子にモテるんだ?今はそれが嬉しくなってきたけど。 「じゃあ行こっか。案内して」 「あぁ。私について来てほしい」  そうして私はベルリスについて行った。  森の奥深く、いかにもモンスターが出そうな場所だ。 「この辺にいるの…?」 「恐らくは…しっかりと剣を持て。私が全力で守る」 「ありがとう…」  ベルリスってこうやって見るとかっこいいな。なんか…守ってほしい。 「危ない!」  後ろから何か迫って来ると感じた途端、ベルリスはすぐに剣を抜き、私の前に立った。 「下がっていろ!」 「うん…かっこいい…」  唐突に現れた謎のモンスターに対し、ベルリスは剣1本で戦う。  とてつもなく速い… 「危険だ!このモンスターは…」  恐らく、ベルリスが真剣に戦っているモンスターだ。  相当強いモンスターに違いないだろう。  だけれど…なんか影に見覚えのある気がするモンスターの様だが* 「スライムだ!」  いや、スライム!?  スライムっぽいとは若干思ってはいたけれどスライム相手にこんなかっこよく戦う人いる!? 「ふぅ。倒した。中々の…強敵だった…」 「ありがとう…」  スライムが強敵とかこの女騎士大丈夫?  さっきまでかっこいいって言っちゃったけれど、ちょっと前言撤回したくなった。 「よし、帰ろう」 「待って?得体の知れないモンスターはどうしたの?」 「今のが…そうじゃないのか?」 「絶対違うでしょ!?」  ダメだ。ツッコミ入れたらキリがない。  ベルリスはどういう経緯で女騎士目指したの? 「帰ってどうするか…だと?私はこの後は近所の子供たちに戦いとはなんなのかを教えに…」 「ごめんなさい。聞いてません」  さっきまで会話が全く成立していない。  話を聞いてあげるとして、その近所の子供たちはスライムで苦戦する女騎士から何を学ぶの? 「それで私は…」  ベルリスが真剣に話していると後ろから大きな影が近づいてきた。 「ベルリス!なんかいる!」 「何?」  大きな影の正体は、巨大なドラゴンだった。  影のドラゴン、これはシャドードラゴンだ。  ゲームでは、かなりの強敵になっている。 「ド…ドラゴンだと…!?」 「えっと…倒せそう?」 「私に任せろ!」  そうしてベルリスはシャドードラゴンに向かって走って行った。だけれど 「くっ、殺せ!」  捕まった。 「ベルリス!今助けるから!」  私は剣から杖に持ち替えて、呪文を唱えた。  火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法とこの世界には魔法が存在する。  それを私は今からこの杖を使い、放つ。  私は全魔法を使う!  ゲームでは全ルートクリア後のプレイヤーのみ、最初から全魔法を一気に使える所謂、強くてニューゲームが搭載されている。  私は勿論、全ルートクリア済みなのでこの世界でもそれが対応している筈だ。 「はぁっ!」  シャドードラゴンに杖を向けて光魔法を放ち、その直後に火魔法を放つ。 そしてすぐに倒した。早い戦闘だ  私って、最強!  ゲームでもこれが使えたのは楽しかったが、実際にやってみると気持ちいい。爽快感がある。 「ふぅ…」  捕まえられていたベルリスが解放される。 「ベルリス!大丈夫!?」  心配している私はベルリスの元に駆けつける。 「エリム…私は…」 「生きてるから大丈夫!ベルリス、しっかりして!」  気を失いそうになっていたので顔を近づけて話しかける。 「あぁ…もう大丈夫だ」 「あぁ良かった…」  安心した私はベルリスから離れようとした。だが、ここで。 「すまない…少しだけ…」  唐突にベルリスが私に抱きついてきた。  え、何これ? 「どうしたの…?」 「今の…怖くなったから少しばかりエリムに甘えたくなってしまった…」 「そっか…ベルリスでもあれは怖いよね」  防具を身に纏ったかっこいい女騎士が私に抱きついて甘えてくる。 これは今、戦った私へのご褒美だろうか?  なんだか癒される…  ベルリスが段々と可愛く見えてきた。  そうしてベルリスに抱きつかれながら堪能していると後ろから声が聞こえてきた。 「おい。人間が2人もいるぞ」 「おぉ…」  大勢のゴブリンが私たちの元へ来た。 「何しに来た…?」  ベルリスは大勢のゴブリンに向かって睨みつける。 「人間は…美味い食材だ。食ってやる!」 「今夜はご馳走!今夜はご馳走!」  ここのゴブリンたち全員は私とベルリスを食材として食べるつもりだろう。  仕方ない。また魔法を… 「ご馳走になるのは…貴様らの方ではないのか?」 「何?」  ベルリスが再び剣を抜く。 「私とエリムの楽しい一時に勝手に土足で踏み入れるとは…いい度胸をしているな?謝って立ち去るなら今のうちだ。さぁ。私がこの剣を振るうまで…立ち去れ!」 「いい度胸してんのはそっちの方だろ?お前ら、やれー!」  大勢のゴブリンは私たちの方へ向かって一斉にかかってきた。が、しかし 「分かった…」  ベルリスは剣を大きく振るった。すると 「う、うわあっ!」  ゴブリンたちは一斉に吹き飛ばされた。 「え!?」 「エリム、離れてろ。私が片付ける」  そしてベルリスはゴブリン1体1体を剣1本のみで跡形もなく、片付けた。 「ベルリス強!?」 「どれ…」  ここでまさかのベルリスが私をお姫様抱っこしてきた。 「え、え!?」 「先程の礼だ。このまま帰ろう」 「う…うん…」  先程までのベルリスとは全然違う。かっこいい。  本当はこんなに強かったんだ。 「騎士になってから…戦う道を選んだものの、先が分からないままでいた。でもそれが私だと思っていたのだが…初めて守りたい誰かができた。それがエリム、貴方だ。あのハイパースネイクから助けてくれた日からずっと貴方を想っていた」 「ベルリス…」  え、惚れそう。  こんな騎士様に守ってくれるなんて私ってばお姫様?  いやいや、お姫様は既にシャロリアがいるし… 「な!あれは…」 「どうしたの!?」  ベルリスは何かを見つけて大きな反応を見せた。  その何かとは? 「ス、スライムだ!?」 「ありゃりゃ」  やっぱりベルリスはベルリスだった。
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