第二章・―完璧超人と問題児達と―

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 どこかへ出かけているのか、はたまた課長室で用事をこなしているのかは知れないのだが、とにかくアンダーテイカーだけでも不在で良かったと、ちょっと安堵して胸を撫で下ろす。 「あぁ。その、曾祖父様がな、今一度自分でもきちんと挨拶に行きなさいというものだから」  礼儀に煩いジェネールならば言いかねないが、今だけは余計な事をとしか思えない。 「えっと、それで……。部長室に挨拶に、行く……?」  久し振りだというのに積もる話もそこそこに、オフィーリアの態度とシュバリエが放つ雰囲気から、何やら察したのか、珍しくシェイカーの歯切れが悪い。  表情も心なしか曇っていて、自分が発端でこうなっていると理解しているオフィーリアとしては、改めて同情の念を禁じ得ない。 「それもなんだが。アンダーテイカー、いる?」 「え。えっと……」  言われたシェイカーの視線があからさまに泳ぐ。  どうやらこの時点でシェイカーも、シュバリエが突然訪問した真意に気付いたらしい。  ピンポイントで指名され、オフィーリアへと助け船を求めるように視線を定めてきた。 「……」  取り敢えず無言で、気付いてない素振りを見せながら話だけでも合わせろと促す。  この場を問題なく乗り切るには、空気を読めない馬鹿を演じるに限る。 「今日は有給を取っているよ。アンダーテイカーも色々忙しくて、アニーと打ち合わせをしている最中だと思う」  そこを読み取ってくれたのか、笑みを浮かべたシェイカーが、機転を利かせた無難な返事をしてくれた。  渦中の話題を出すのはそこそこ危険ではあるのだが、少しばかりぼかしつつ、ちゃんとアンダーテイカーも反省して、アニーに付き添って結婚式の用意を進めているよとアピールしたのだ。 「そうなのか。まぁ、その一件についてはトウジ君から全部聞いているよ。オフィーリアからは何も知らされなかったんだけどね」  答えを聞いた瞬間、シュバリエからの先手がすかさず入る。  たったそれだけ、あくまでも爽やかな笑みで言われただけなのだが、その場の空気が張り詰めたものへと変わるのが()()る。  シェイカーを筆頭にした全員が、それ以上何も言えなくなったのを良い事にして、シュバリエは続けた。
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