第三章・―指南役vs完璧超人―

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 ――医務室にて。  辿り着くまでには冷静にはなってきて、すっかりいつもの調子を取り戻したオフィーリアは、本日何度目かの頭を抱える業務を無言のままこなしていた――。 「その……。オフィーリア。えっと、だ、大丈夫……?」  しばらく見守ってはいたが、オフィーリアが医務室に入るなり頭を抱え出したまま動かなくなってしまったので、心配になってきて声をかける。  すると、ゆっくりと顔を上げたオフィーリアが唸る。 「大丈夫や。……もう落ち着いとる」 「そ、そう。それは良かった」  先刻までの事態を考えるとちっとも良くはないのだが、当のオフィーリアは気にもしていないようで、苦虫を噛み潰したような表情になるばかりだ。 「聞いて良いのかな?」 「何を」 「先刻の感じには、良くなるの?」  少なくともシェイカー自身は初めて目の当たりにした光景であった。  その事を理解しているらしいオフィーリアも、誤魔化す事もなく長い息を吐きながら答える。 「……たまにある。まぁ、俺は普段、がっちがちに自分の感情コントロールしとるさかいに、滅多な事ではなれへんねんけど。一回タガが外れたらもうあかんねん。あないして、自分でも感情の制御が出来んようなってまう」 「へ、へぇ。そうなんだ」  感情をコントロールという事は、普段から本当の意味で喜怒哀楽を他人に示していないという事実があるのではなかろうか。そんな、医者の立場としてはあまり見逃せない事実をさらっと述べられて、曖昧な相槌を打つ事しか出来ない。 「あぁ。せやけど、えらいとこ見せてもうたな。自分らに」 「びっくりはしたけど、話せば皆、()()ってくれるよ、きっと」  瞳を伏せて、反省するような口調になるオフィーリアを励ますように、シェイカーが笑みを浮かべる。
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