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――微睡みながらも、普段は決してないぬくもりを左側に感じて、薄く瞳をあけた。
ここはロンブル地方にあるヴァイス。
それも国の端に位置するオフィーリアの自宅、しかも寝室内である。
今は恐らく深夜で、来客など極一部を除いてない筈だった。
オフィーリアは前回やらかした一件で、ジョシュアから一ヶ月の有給を強制的に取らされており、その消化もようやく終わって、もう少しで職場復帰の身なのである。
有給が始まってからすぐ、オフィーリアはルフィナ、トウジを連れて世界中を周り、普段は場所が遠過ぎて時間も足りず、手が回らない孤児院や教会を訪ねて、子供達の笑顔や無事を確認し、経営者達とも改めて交流を深めながら、心穏やかに過ごしてきた。
そうして後少しは心身をゆっくり休めるため、自宅へと戻り悠々自適に暮らしていたのだが、そんな平穏を破ったのは、見知った従兄弟の存在だった。
「……シュバリエ……?」
寝入っている相手……シュバリエを見詰めながら、起こさないよう低い声音で、それだけ呟く。
この従兄弟、昔からたまにというか、しょっちゅうこうして深夜に訪れては、オフィーリアのベッドに潜り込み一緒に寝るという悪癖がある。
というのも、シュバリエが血の契約を交わしている契約主が女の子なのだが、彼女はまだ未成年であるにも関わらず、二人は両片思いという複雑な関係性だ。
その彼女、普段は別々の部屋で寝ていても、稀に深夜に「寂しいから」という理由でシュバリエが眠るベッドへと潜り込み、一緒に寝たがる癖がある。
シュバリエの理性が保てる時は、そのまま一緒に寝るらしい。
だが、そうでない時もあるらしく、我慢の限界に達する前に無意識の内にでも、シュバリエの能力である風を操りそれに乗って、決まってオフィーリアが眠る寝室へとやってきて一晩過ごすのだ。
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