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「せやな」
対する返答は、実に素っ気ないものであった。
柄にもなく大声を出した上、号泣して暴れたせいで疲れたのか、俯いているその表情は心なしか暗い。
そんなオフィーリアからの返事を機に、医務室には沈黙が降りる。
「……」
オフィーリアはそれ以上口をひらこうとしない。
二人共、手近にある椅子を引き寄せ座ってはいるが、この沈黙はシェイカーにとっては気不味いものであるため、思い切って浮かんだ疑問をぶつけてみる事にする。
「なぁ、オフィーリア。今回は一体何故、身を挺してまでアンダーテイカーを庇ってくれたんだ?」
「……そんなん決まっとる。自分らこれ以上、上司が情けない醜態晒しとるとこ、見たあらへんやろ。……俺かて引き際くらい弁えとる。やからヴァンには無理強いせんかったんや。それをやな、例えシュバリエでも、後からきただけのやつが引っ掻き回して良ぇ筈。……あらへんのや」
困ったように柔らかそうな前髪を掻き上げながら、返ってきたのはいくらか意外な答えであった。
そこにいるのはいつもの不遜な態度が似合う悪友ではなく、ただ心の底から想ってくれている親友のようだった。
「あ、あの。顔洗ってきたらどうかな? それでもう少し落ち着いたら、皆のところに戻ろうか?」
「……」
言われたオフィーリアは無言のまま立ち上がると、医務室に設置されている手洗い場で顔を洗い、懐から出したハンカチで水気を拭き取った。
「俺はああいうのは好かん」
「ん? どういうの?」
ぽつりとそう呟いたのが耳に入り、思わず質問する。
すると、吐き捨てるような口調で意外な事を言う。
「シュバリエみたいな、過保護なやり方」
「そうなの? てっきり受け入れてるのかと」
以前聞いたディニテからの話だと、シュバリエ以下ブルー家の面々は、オフィーリアを無条件で可愛がってきたらしい事が伺えた。
それを承知の上で付き合ってきたという事は、てっきりオフィーリアもその状態を受け入れているのかと、そう思っていたのだ。
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