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翌朝早く、小鳥の鳴き声が外から聞こえてくるという、一見して爽やかな目覚めで起きたオフィーリアだったが、天井を見詰めて唸る。
晴れの天気も太陽も、オフィーリアにとっては憂鬱なものでしかない。
曇るか雨降れ、とか悪態を吐きつつ上半身だけをベッドから起こす。
――ふと、横を見る。
すると案の定、既に隣にはシュバリエの姿はなかった。
いつも夜明け前、契約主が目覚めるまでには自室に戻り、昨夜と同じ体勢で寝直すのがシュバリエのルーティンであると、以前に聞いた事があった。
だから、今朝もそうなのだろうと安易に考えてベッドから降り、洗面所で軽く身支度を整えてからブラックのハイネックにジーンズといったラフな服装へと着替え、キッチンへと足を向けた。
いつもならば、ルフィナがトウジに朝食を作ってもらっている時間帯で、オフィーリアもキッチンへと続くドアの向こうには、そんな光景が広がっていると信じて疑っていなかった。
――のに、だ。
「あ、おはようフィー! 今日はちょっとお寝ぼ……」
この声が聞こえた瞬間、オフィーリアは開けていたドアを勢い良く閉め切ったという。
そうしてオフィーリアはしばらくの間、頭を抱えながら「あの阿保帰ったんやなかったんかいな」と、ドア向こうから聞こえてくる声の一切を遮断しながら悩みに悩んだ。
しかし、このまま現実逃避していても仕方ないため、長い息を吐きながら、意を決して再びドアを開ける。
「フィー、いきなりドアを閉めるからびっくりしたじゃあないか。何かあったのか?」
開けたら都合良くいなくなっていてくれないかなぁとかいう思いは、儚く消え去った。
「……え? 何でおんの自分。早く消え去れや」
物凄く悩んだ末の第一声がこれである。あまりの衝撃に語彙力が死んでしまったようだ。
それでシュバリエからの反応を待つ。
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