第一章・―完璧超人、現る―

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「トウジ君なら気を遣ってくれて、朝食を済ませてからルフィナちゃんと連れ立って、出かけて行ったぜ」  すると空気を読んだかのように、本当にすかさず、まるで普通に話題としていたかの如く、シュバリエが疑問に答えてくれた。  思わずあの阿保変な気ぃ遣うなやぁぁぁあ、とか内心で悪態を吐いたのだが、それはそれで虚しい行為だと止めて、打開策はないかと思考を巡らせる。  相手は従兄弟ではあるが、ただの“昏きもの”……俗に言う吸血鬼というだけではなく、“蒼”の一族そのものを率いる長、四大霊鬼“蒼”なのだ。  という事はオフィーリア自身、上級の中でも四大霊鬼に一番近い、直系の血筋という強さを誇る“昏きもの”なのだが、今はそこはどうでも良く、とにかくそういう事だからして、シュバリエには生まれ持ったカリスマ性がある。  だからして、何となくこういう時は雰囲気に流されて頷いてしまいそうになるのだが――。 「俺は用事あらへんねんけど、一応聞いといたるわ。遊ぼうぜってな、一体行きたいところとやらは、どこやねん」  今日こそは流されない。とか決意しつつも、トウジ達の不在で動揺している事を悟られないよう、あくまでも平静を装いさりげなく聞いてみた。 「え。それは前から気になってたイグレシオン」 「……言うと思たわ……」  答えを聞いて再び頭を抱えると、何だってどいつもこいつもイグレシオンに行きたがる、とか一通り憤った後、顔を上げて続ける。 「何しに行きさらす」 「遊びに?」  疑問系なところが非常に怪し過ぎるのだが、シュバリエは一度言い出したら絶対に実行に移す、有言実行タイプなのを知っている。  これは素直にイグレシオンへ連れて行かないと、しばらくへそを曲げて、余計に扱いが厄介になるパターンだと理解する。  これは断り切れない。 「……少しだけやで」 「うんうん。そんなんちゃんと()()ってるってー。じゃあ早速イグレシオン行こうぜ」  シュバリエがしてやったりとばかりに満面の笑みを浮かべると、周囲に蒼い風を纏わせた次の瞬間には、二人の姿はコーラルブルー家のキッチンから消えていたのだった。
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