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プロローグ:少女漫画みたいな恋
東雲家の長男透、次男優、三男守の次に産まれた唯一の女の子、晶は、恐竜や電車のおもちゃに囲まれながら育った。
わんぱくな兄たちに似て、晶も例に漏れず、小学生までは毎日のように兄弟やその友達に混ざり泥遊びやサッカーを楽しんでいた。
しかし、中学生にもなると事態は少しずつ変わっていく。
晶は決して女の子の友達が少ないわけではなかった。小学生までは「晶ちゃんって本当に男の子みたいに元気だね」で済んでいたのだが、さすがの晶も中学生になって、周りの様子が今までとは変わっていっていることに気付いたのだ。
男子も女子も関係なく遊んでいた友人たちは徐々に男女でわかれ始め、同じテレビの話題で盛り上がっていたのに、ほとんどの女子はアイドルやメイク、男子の大半はグラビアやゲームの話で盛り上がるようになっていった。
そして、晶と同じく男兄弟の中で育った幼馴染で親友の由ちゃんが「晶ちゃん、私智樹のこと好きかもしれない」と言ってきた。
この発言は、晶にとっては雷に打たれる以上にかなり衝撃的なものだった。
みんなおむつを履いている頃から一緒に遊んでいた仲なのに、突然「恋」の予感がそこかしこで漂い始めたのだ。
このままでは取り残されてしまうと焦った晶は、まずは「恋」とはなにかを勉強するために、貯めていたお小遣いで初めての少女漫画を買ってみることにした。
どれを読めばいいかわからなかったので、とりあえず一番表紙の絵が好みなものを手に取ってみた。
今まで読んでいた少年誌とは違い、繊細な絵柄で些細な感情の起伏丁寧に描いている。基本的には戦わないし、大きな事件が起きることもない。
ヒーローや探偵に憧れていた晶はこの頃から徐々に、少女漫画の主人公に対して密かな憧れを抱くようになる。
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