あまからしょっぱ

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1.あまい出会い 林調は、憮然な表情で新入生席に座っていた。 本命校受験前日に、車と事故り。 目が覚めたのは、受験日翌日で。 結局、通学時間が片道1時間半もかかる男子校に ナントカ滑り込んだのだ。 カノジョが出来て、毎日浮かれている兄を見て。 『オレもカノジョ作って。 シアワセな学生生活送るんや!』とMAXだった 気合が。 中学生活スタートから、いきなり行き場が無く なってしまった。 おまけに学区が全然違うので。 知り合いが1人もいない。 そして更に面白く無いことに。 B組になったのだ。 新入生は、入試得点の上位からABCと順番に振り 分けられる。 つまり自分はトップ入学じゃないと言うことだ。 本命校から2ランク低い学校なのに。 『どんなヤツが1番なんや?』 そんなキモチで壇上を睨んでいた。 アナウンスが響く。 「では新入生を代表して。 やまぐちあとむ君、檀上へ」 ぶふっ。 思わず、林は噴出した。 (あ、あとむうう?恥ずうう!) でも。 回りの視線が集中したのは。 檀上のアトム君、ではなく。 必死で笑いを堪えている、林へだった。 (え?なんで? 可笑しないんか?) 非難の視線を感じて、ナンカヤバイと気付く。 でも。 檀上から、爽やかな声が響くと。 みんなの視線が向き直る。 もちろん林も、だ。
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