あまからしょっぱ

11/133
前へ
/133ページ
次へ
1年A組の担任は、困った顔で頭を掻く。 これは間違いなく。 A組の神田のことを指しているからだ。 思春期男子の変化は、とても大きい。 身長はニョキニョキと伸び。 身体の厚みは増し。 ニキビだヒゲだと、色々濃くなり。 食堂では毎日、大盛丼飯が売切になる。 制服なんて1年使えば、すぐに窮屈だ。 ただ神田のように。 特注サイズなのに。 まだ生地も擦れていないのに。 もうキツクて着ることが出来ない、なんて 例はさすがに珍しい。 白シャツに黒カーデガンを羽織って、誤魔化 しているけれど。 伸縮性のある体育ジャージで過ごしたくなる のも無理はない、と教師達は黙認していた。 そんな扱いに。 多分、それ以外の目立つ存在感も含めて。 一部の生徒から、嫉妬や反感を持たれて しまったのだろう。 その教師は暫し考えてから、職員室を出て行った。 昼休み、林がクライメイトとグランドへ 向かっていると。 隣校舎の方から、山口と神田が連れ立って来た。 「何や?それ」 神田は両手に、大きなレジ袋を持っている。 「白シャツ。 野田さんがお下がりくれたんや」 「ええっ! 野田さんの?エエなああ」 「全然良うないワ」 隣の山口は不機嫌そうだ。 その様子に、神田も少し困り顔で。 だから林はピンと来た。 (なんかあったんやな)と。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加