あまからしょっぱ

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「オレもよう、かーちゃんに文句言われんで。 兄ちゃんと同じ学校行っとったら。 制服もSDGsやのにて。 まだキレーやのに、サイズ合わんからアカンて。 それこそ資源ロスやんなあ」 「そやねん。 お下がり言うても。 去年作ったばっかやねんて。 めっちゃ状態エエし。 有難いワ」 「そーゆー問題ちゃうやろ!」 うんうんと頷きながら。 軽いツッコミをし合う2人に。 山口はイラっとした声になる。 誰かが、神田を個人攻撃したから。 こんなコトになったのだ。 何を着るかじゃなくて。 それが問題なのだと、言いたいところだ。 「そやそや。 ホンマそーやねん」 むくれ顔の山口に、林はニヤっと笑う。 それから。高らかに大きな声で笑う。 「はは! たかが白シャツの話や。 大した話ちゃうワ。 そんなん。 誰も、気にせえへんワ」 最後の一言は、少し低く。ゆっくりな声だ。 ちょうどA組教室の前で。 扉も換気窓も開いている。 教室の中まで聞こえているはずだ。 もしかすると。 A組の誰かはギクっとしたかも知れない。 そして、もう一押し。 翌日、林は体育ジャージで登校してきた。 「朝飯食うとって。 制服に味噌汁こぼしたんや」 そうしたら。 次の日は、山口が体育ジャージだ。 「クリーニング取りに行くの、 忘れました」 もちろん。
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