あまからしょっぱ

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山口家の家政婦さんが忘れるはずないのだ けれど。 それから、ちらほらと。 部活の後、まだ汗が引かない生徒とか。 1時間目の授業が体育であるクラスとか。 学ランと白シャツとジャージと。 いつの間にか。 各自が過ごし易いように。 自由に、着回すようになっていった。 「林、野田さんトコ行くんやけど。 一緒するか?」 「行く行く行く! もちろんや!」 ある日の放課後、神田がB組に顔を出した。 「あっちゃんは?」 「先に生徒会室行っとる。 迎えに来いて、ライン来た」 「何や、人質救出作戦か?」 楽しそうに、林の目がキラキラしている。 「ちゃうワー。 けどまあ。 何か言われんのは、覚悟しとかんとなあ」 「なんでやねん。 オレら何もしてへんで。 しぜーんに、いつの間にーか。 そうなっただけやん」 「切込み隊長が、よう言うワ」 科目教室が並ぶ、静かな廊下の突き当りが 生徒会室だ。 「失礼します」 2人が入ると。 現生徒会長と副会長。 それに野田さんと山口が座っていた。 「おう。 呼び出してすまんな。 受験組は、他の学年となかなか時間が合わ へんからなあ」 「いえ。 こっちこそ、まだ直接お礼言えてへんで。 失礼しました。 制服の件、お世話になりました」 長身をぺこんと曲げて、神田がお礼を言う。
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