あまからしょっぱ

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頼むワ」 山口はぷくーっと頬を膨らませて、林を 睨んだ。 「ただいまあ」 マンションの最上階が、山口家だ。 フロアの5分の3を占め。 残り2戸は父親の秘書と運転手の住まいに なっている。 「おかえりなさい。 遅かったですねえ。 何かありましたん?」 家政婦の長嶺さんが出迎えてくれる。 「うん。 気い合う子が出来て。 色々話しとったら遅なってもた」 「まあ。 それなら良えですねえ。 鈴が丘とは随分様子がちゃうんでしょうけど。 お友達が出来たんなら。 毎日楽しゅうなりますねえ」 白髪混じりでふっくらした、家政婦さんは 嬉しそうに笑う。 旦那さんは、山口家の運転手をしていて。 小さな頃から、姉3人と自分を世話してくれ ている人だ。 心配を掛けたくはなかった。 「一緒に勉強したりして。 これからも時々遅なるかも。 気にせんとってな」 「かしこまりました。 お友達は大切ですから。 今の時間を楽しんでくださいませねえ」 「うん。 ありがと」 広い居間へ入ると、白っぽい猫が飛びついてきた。 「ただいま。シオ。 一緒におやつ食べよか?」 「あかんよお。 さっき、ちゅーる食べたばっかや」 ソファの向こう側から声がした。 「愛ちゃん、帰とったんや」 「もうすぐ出掛けるけどなー」
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