あまからしょっぱ

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話が通じてないのは、林だけだ。 仕方ないので、訊いてみる。 「あの新入生代表、有名人なん?」 一瞬、場が静まる。 全員『ホンマに何も判ってへんのやなあ』と 呆れた表情だ。 「H市に住んどおなら。 誰でも知っとお家やで」 「県で一番大きい総合病院の子おや」 「お姉さんが3人もおって。 みんなめっちゃ美人やねんて」 「この前ユニクロで見掛けたんやで。 こんなトコで服買うんかってビックリしたワ」 「オレ、同じ塾やねん。 クラスはちゃうけど。 謝り行くんやったら、付いてったろか?」 ほとんど、芸能人の噂話みたいになっていて。 すっかり林は、ゲンナリした。 (なんやみんなして。 ただ有名人と知り合いになりたいだけやんか) だから。 はっきりと言う。 「別に謝る必要なんてナイやろ。 親の趣味で、キラキラなん。 今時ようあるコトやん。 そんなん、却って気ぃ遣い過ぎちゃうか」 わざわざ頭下げに行って。機嫌取って。 取り巻きのひとりになるつもりなんて無い。 そんな、きっぱり過ぎる林の態度に。 クラスはすっかり静まり返ってしまった。 帰宅すると、2つ上の兄がいた。 カノジョが出来てからは、オシャレ眼鏡にして。 軽くパーマなんか掛けている。 兄弟でも、全然タイプが違う。 「おお。学ラン。 昭和やけど、意外と似合とうやん」
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