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1話
「大丈夫だよ。私が力になるから」
温かくて柔らかい手。
愛らしくて高い声。
透き通るような紫の瞳。
そして、みずみずしい果物に似た爽やかな香り。
返事をしようとしても声が出ず、手を伸ばすとそのまま全てが消えてしまう。
ただの想像なのか幼い頃の記憶なのか曖昧な、そんな夢。
物語の王子のような男の子が微笑むなんて、まるで年端もいかない少女がみるような夢だ。
「手伝ってくれる人なんていない。俺が、全部なんとかしないと」
ベッドから起き上がった青年は、艶のある金色の髪を掻き上げて大きく息を吐いた。
継ぎ接ぎのあるカーテンからは、朝日が昇る途中の光が差し込んでいた。
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