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初めからやり直すんだ。
ミチルとはキッチリ別れる。
二度とサエを苦しめたりすることがないよう、これからのオレを信じて貰えるように、もう一度……。
「ごめんね、フミくん。痛かったよね? ねえ、色々片づけたら一緒にベッド買いに行こうよ。寝具も全部買い替えるからね」
ようやく起き上がらせてくれたサエの声が少し明るくなったことにホッとする。
それからオレの目隠しを丁寧にゆっくりと剥がしてくれた。
静かに目を開くと、既にカーテンの隙間から漏れる太陽の光が朝を知らせていた。
ぼんやりと慣れてきた目がサエの笑顔を捉える。
「痛くない?」
「少しだけ、でも大丈夫」
ニッコリと微笑んでオレを見つめているサエは、見たこともない赤いエプロンをつけていた。
「サエ?」
違和感が一気にオレを襲う。
「ミチル、は……、どこに?」
ベッドの下には夕べ脱ぎ捨てた彼女の服が、下着までそのまま残っていた。
「やっぱりまだミチルさんのこと気にしてるの?」
「そうじゃない、そうじゃなくて」
「だよね、もう裏切らないって誓ってくれたもんね?」
フラリと立ち上がったサエの手が、何かを持っていた。
スイカみたいにぶら下がっているそれからは、ポタポタと落ちる雫。
クローゼットの鏡に映る裸のオレの頬が赤く染まっている。
「夫婦やり直し記念日の初めての共同作業だよ。一緒に片づけようね、フミくん」
ミチルらしき裸体を指さして微笑むサエを前に。
身体中の血液が凍り付いたかのように内側から震え出す。
不規則な自分の口から洩れる嗚咽のような呼吸だけが静かな朝の寝室に響いていた――。
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